1928年ドイツ国会選挙

1928年ドイツ国会選挙：ヴァイマル共和政の岐路

1928年5月20日に行われたドイツ国会選挙は、ヴァイマル共和政の行く末を占う重要な選挙でした。この選挙では、それまで政権を担っていたブルジョワ諸政党が敗北し、社会民主党(SPD)が勝利を収めました。この結果を受けて、ヘルマン・ミュラーを首相とする社民党政権が発足することになります。

解散までの経緯

マルクス内閣は、保守から中道にかけてのブルジョワ諸政党の支持を受けて成立していました。しかし、バーデン州の学校における宗教教育問題を巡って内閣が分裂し、事実上崩壊状態に陥ります。さらに、海軍拡張を目的とした「装甲巡洋艦A」の建造計画が国会で可決されたものの、州を代表する参議院で否決されたことで、議会運営は行き詰まりました。結局、1928年3月31日、国会は解散され、選挙が実施されることとなります。

選挙戦

SPDは、軍拡よりも国民生活の向上を優先すべきだと訴えるため、「装甲巡洋艦より児童給食を！」というスローガンを掲げて選挙戦を展開しました。一方、ナチ党(NSDAP)は、初めて国政選挙に参加しました。ゲッベルスは「民主主義の兵器庫を掌握する」という戦略を掲げ、国会進出を目指しました。保守・右派勢力は、シュトレーゼマン外相の「和解外交」を批判する姿勢で選挙に臨みました。

選挙結果

選挙の結果、SPDが躍進し、マルクス内閣を支持する与党は軒並み議席を減らしました。当時のドイツは好景気にあり、ヴァイマル共和政への肯定的な評価がSPDへの支持につながったと考えられています。一方、保守・右翼陣営は惨敗しました。特に国家人民党は議席を大幅に減らし、党内では親政府路線への批判が高まりました。ナチ党も議席数を伸ばすことができず、この時点ではまだ大きな勢力とはなりませんでした。

ミュラー内閣とヴァイマル共和政の終焉

選挙後、SPDのヘルマン・ミュラーが首相となり、社民党、中央党、民主党、人民党、バイエルン人民党による連立政権が発足しました。ミュラー内閣は、ヴァイマル共和政下で最長の期間存続した内閣となりました。しかし、装甲巡洋艦Aの建造問題や、世界恐慌による経済危機の中で、内閣は次第にその求心力を失っていきました。特に失業保険の掛け金増額問題をめぐって、社民党と人民党が対立したことが大きな転換点となりました。結局、ミュラー内閣は1930年3月27日に総辞職し、ヴァイマル共和政の議会制民主主義は機能不全に陥ったとされています。

各党の得票と獲得議席

選挙制度は比例代表制で、投票率は75.60%でした。この選挙で、ウルブリヒト、ゲッベルス、ゲーリング、ピークといった後に歴史に名を残す人物が初当選しています。

結論

1928年ドイツ国会選挙は、ヴァイマル共和政における転換期を示す重要な出来事でした。SPDの勝利は一見安定をもたらしたように見えますが、その後の世界恐慌と続く政治的混乱は、最終的にナチスの台頭を招くこととなり、ヴァイマル共和政の終焉へと繋がっていくのです。この選挙の結果は、単なる政権交代以上の意味を持つ、ドイツ、ひいてはヨーロッパの歴史における重大な出来事であったといえるでしょう。

もう一度検索