1929年のル・マン24時間レース

1929年ル・マン24時間レース：ベントレーの圧倒的勝利

1929年6月15日から16日にかけて、フランスのサルト・サーキットで開催された第7回ル・マン24時間レースは、ベントレーチームの圧勝に彩られました。前年のレースからわずかに短縮された16.340kmのコースを舞台に、25台の車が栄光のゴールを目指して競い合いました。しかし、過酷なレースを完走できたのはわずか10台のみ。その中で、ベントレーは類まれな強さを見せつけました。

ベントレーは、主力車種であるベントレー・スピード6とベントレー・4½リットル計5台を投入。そのうち4台は伝統的なブレーキを採用したものの、11号車のみペロット製のブレーキを搭載するなど、様々な実験も行われていました。スタート直後からベントレー勢は猛威を振るい、1周目終了時点では1号車から5号車までがゼッケン順にトップ5を独占するという衝撃的な展開となりました。

しかし、レースは常に予期せぬ事態が起こるものです。7周目、ルービン/ハウ組の11号車がダイナモシャフト破損というアクシデントに見舞われ、リタイヤを余儀なくされました。ル・マンにおいて、ベントレー勢が最初に脱落する瞬間でした。このアクシデントにもかかわらず、残りの4台のベントレーは、その卓越した性能とドライバーたちの見事なドライビングテクニックによって、最後まで走りきりました。

最終的に、栄光の優勝を手にしたのは、バーナート/バーキン組のベントレー・スピード6の1号車でした。24時間という長丁場を戦い抜き、2843.830kmを平均速度118.492km/hという驚異的な速さで走行。当時としては信じられないほどのスピードで、観客を魅了しました。レース中、1号車は10周目にはラップ平均速度123.305km/hを記録、その後さらに速度を上げ、133.551km/hをマークしたと伝えられています。当時発行されていた新聞「オート」の記事によれば、18周目には7分7秒という驚異的なラップタイムを記録、平均速度は137.929km/hに達し、最高速度はなんと180km/hにまで達したと報じられています。

2位にはダンフィー/キッドストン組のベントレー・4½リットル9号車、3位にはベンジャフィールド/ド・エアランガー組のベントレー・4½リットル10号車、4位にはクレメント/シャサーニュ組のベントレー・4½リットル8号車が入り、見事なワンツーフィニッシュ、そして上位4位を独占するという完全勝利を収めました。この結果は、ベントレーの圧倒的な性能と信頼性の高さを改めて証明することとなりました。

このレースは、ベントレーの黄金時代を象徴する出来事であり、多くの関係者やファンに忘れられない感動と興奮を与えました。同時に、レースにおける技術革新やドライバーたちの技量、そして機械の限界への挑戦といった、モータースポーツの様々な要素が凝縮された、歴史的な瞬間でもありました。

参考文献

『ルマン 伝統と日本チームの戦い』グランプリ出版 ISBN 4-87687-161-2
ドミニク・パスカル著、日沖宗弘訳『ル・マンの英国車』ネコ・パブリッシング ISBN 4-87366-068-8
* 黒井尚志『ル・マン 偉大なる草レースの挑戦者たち』集英社 ISBN 4-08-780158-6

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