1930年のル・マン24時間レース

1930年6月21日から22日にかけて、フランスのサルト・サーキットで開催されたル・マン24時間レースは、8回目の開催にして、過去最小規模のレースとなりました。

僅か17台、もしくは18台という少ない参加台数でしたが、メルセデス・ベンツ、タルボ、そしてブガッティといった名門メーカーが参戦し、レースに華を添えました。

このレースに初出場を果たしたのがMGです。847ccという、この年最も排気量の小さいMタイプ・ミジェットで挑みましたが、2台のMGは残念ながら完走することができませんでした。28号車はピストン損傷、もしくはトランスミッションシャフトのトラブルにより82周目でリタイヤ。29号車は発電系統やオイルパイプの漏れにより、5時間目28周でレースを終えました。

注目を集めたのが、ワークスチームから3台、そしてミス・パジェチームから2台が出場したベントレーです。ワークスチームはスピード6、ミス・パジェチームはブロワーを搭載したモデルを投入しました。特に、ミス・パジェチームの9号車は4周目で平均速度144.352km/h、ラップタイム6分48秒という驚異的な記録を樹立しましたが、2台のブロワー搭載ベントレーは共にリタイヤという結果に終わりました。

激しい戦いを制したのは、ウルフ・バーナートとグレン・キッドストン組のベントレー・スピード6（4号車）でした。彼らはルドルフ・カラツィオラが駆るメルセデス・ベンツと10時間に渡る死闘を繰り広げ、24時間で2,930.663kmを平均速度122.111km/hで走行し、優勝を掴みました。この勝利で、ウルフ・バーナートは3度のル・マン出場で3度の優勝という偉業を達成しました。

しかし、この勝利を最後にベントレーはワークスとしての参戦を終了。その後、ベントレーがル・マンで総合優勝を飾るまでには73年もの歳月が流れ、2003年まで待つことになります。

2位には、フランク・クレメントとリチャード・ワトニー組のベントレー・スピード6（2号車）が入賞しました。

この1930年のル・マン24時間レースは、少ない参加台数ながらも、名門メーカーの競演や、記録的なラップタイム、そしてベントレーの圧勝と、多くのドラマが詰まったレースとして記憶されています。また、ベントレーワークスのル・マン撤退という歴史的転換点にもなった重要なレースと言えるでしょう。 ワークスチームの撤退後、ベントレーのル・マンにおける輝かしい活躍は、70年以上もの間途絶えることになったのです。このレースの結果は、自動車史に大きな影響を与え、その後長きに渡るル・マンの歴史に深く刻まれることになります。様々な要因が絡み合い、今後のレース展開に大きな影響を与えることとなったのです。 小さな台数ながらも、そのドラマ性と歴史的意義は非常に大きなものがありました。

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