1931年の日本公開映画

1931年（昭和6年）は、日本において国内外の多様な映画が活発に公開された年でした。この年に日本国内で商業上映された主な作品群について概観します。

この年日本で紹介された映画は多岐にわたりましたが、中でもアメリカ映画の存在感が際立っていました。ドイツ、フランス、ソビエト連邦、イギリスなど、欧州各国の作品も少なくありませんでした。

日本国内でも多くの新作が公開されました。特筆すべきは、斎藤寅次郎監督の『マダムと女房』がキネマ旬報ベストテンの日本映画部門で第1位に輝いたことです。その他にも、清水宏監督の『心の日月』(第2位)、小津安二郎監督の『東京の合唱』(第3位)、伊藤大輔監督の『一本刀土俵入』(第4位)、五所平之助監督の『舶来文明街』(第5位)など、現代劇から時代劇まで幅広いジャンルの作品が評価を得ました。また、内田吐夢監督の『仇討選手』(第6位)、田坂具隆監督の『何が彼女を殺したか』(第7位)、伊藤大輔監督の『牢獄の花嫁 前篇』(第8位)、稲垣浩監督の『続大岡政談 魔像解決篇』(第9位)、五所平之助監督の『生活線ABC 前後篇』(第10位)といった作品もベストテンに名を連ねています。『南国太平記』や『牢獄の花嫁』のようなシリーズ作品も公開され、人気を博しました。

海外からは、ヨセフ・フォン・スタンバーグ監督、マレーネ・ディートリヒ主演の『モロッコ』がキネマ旬報外国映画部門の第1位に選ばれるなど、話題作が多く公開されました。ルネ・クレール監督のフランス映画『巴里の屋根の下』(第2位)、キング・ヴィダー監督の『市街』(第3位)、再びルネ・クレール監督のフランス映画『ル・ミリオン』(第4位)などが高評価を得ています。スパイ活劇『間諜X27』(第5位)、ソビエト連邦のエスフィル・シューブ監督による記録映画『全線』(第6位)なども注目を集めました。

アメリカ映画では、『キング・オブ・ジャズ』『チゥインガム行進曲』といった音楽作品、冒険映画『大飛行船』、ディズニー制作のアニメーション『チゥインガム行進曲』、フィッツジェラルドが脚本に参加したとされる『掠奪者』など、ジャンルも多岐にわたりました。また、トーキー初期のホラー映画として知られるトッド・ブラウニング監督の『魔人ドラキュラ』や、クラシック『復活』、西部劇『ビリー・ザ・キッド』なども公開されています。キネマ旬報外国映画ベストテンには、『悪魔スヴェンガリ』(第7位)、『最後の中隊』(第8位)、『陽気な中尉さん』(第9位)、『アメリカの悲劇』(第10位)といった作品もランクインしました。

ドイツ映画では、前述の『嘆きの天使』やルイス・マイルストン監督による反戦映画『西部戦線一九一八年』のほか、『ニュウ』『眠れよ我が子』『白魔』『不滅の放浪者』『泣き笑ひの人生』『人間廃業』『怪船ヨシワラ号』『掘鑿機1010号』『カラマゾフの兄弟』『拳闘王』『火の山』など、数多くの作品が紹介されました。フランス映画では『南海の女王』『掻払ひの一夜』、ソ連映画では『春』『大地』、イギリス映画では『密告』など、様々な国の作品が公開され、日本の映画界に刺激を与えました。

1931年は、サイレントからトーキーへの移行期でもありましたが、国内外からバラエティ豊かな作品が次々と公開され、日本の映画観客に多くの選択肢を提供した一年であったと言えるでしょう。

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