南国太平記

『南国太平記』について

『南国太平記』は、直木三十五によって書かれた小説で、1930年6月12日から翌年の10月17日まで「東京日日新聞」と「大阪毎日新聞」に連載が行われました。また、挿絵は石井鶴三が手掛けました。この作品は幕末の薩摩藩内での内紛、特にお由羅騒動をテーマにしており、歴史的背景を持つフィクションの作品です。

小説の成功と影響

小説『南国太平記』は、多くの人々に支持され大ヒットを記録しました。その成功により、直木三十五の収入は月に1000円を超えるまでになりました。この作品は、先代のロマン主義から新たな時代の文学へと移行する過程を示す象徴的な作品とされました。特にハードボイルドや社会派という新しい文学スタイルの開拓に寄与したと評価されています。

映画化の歴史

『南国太平記』は、その知名度と人気から映画化にも恵まれました。直木三十五の原作をもとにして、生前と没後の計10本の映画が制作されたのです。この作品は、全体の間に直木原作の映画の20%を占めるなど、その文化的な重要性がうかがえます。

映画化の初回は1931年に行われ、松竹下加茂撮影所と東亜キネマ京都撮影所の製作による2本が同日に公開されるという人気の高さを示しました。この年には、計5本の『南国太平記』シリーズが公開され、さらにその後も多くの作品が京都の撮影所で制作されました。

主な映画作品

1. 松竹下加茂撮影所 - 1931年
- 南国太平記 前篇
監督：井上金太郎、主演：月形龍之介
- 南国太平記 後篇
撮影：鎌田吉太郎

2. 東亜キネマ京都撮影所 - 1931年
- 南国太平記 第一篇/第二篇
監督：山口哲平、主演：羅門光三郎
- 南国太平記 双竜篇
撮影：山中真男

3. J.Oスタヂオ - 1937年
- 南国太平記
監督：並木鏡太郎、主演：大河内伝次郎

4. 東映京都撮影所 - 1954年
- 南国太平記
監督：渡辺邦男、主演：片岡千恵蔵
- 続南国太平記 薩南の嵐
監督：渡辺邦男

5. 東映京都撮影所 - 1960年
- 南国太平記 比叡の血煙り
監督：秋元隆太、主演：里見浩太郎

また、1979年から1980年にかけてはNHKの総合テレビで『風の隼人』というタイトルでテレビドラマ化もされました。これにより、新たな世代の視聴者へもその物語は伝わっています。

関連作品

『南国太平記』の続編として、1935年に制作された『益満休之助』があります。この作品にも前作に登場した架空の人物が再登場し、さらなる物語が展開されています。

このように『南国太平記』は、文学と映画を通じて多くの人々に影響を与え、日本の文化の中で重要な位置を占めている作品に成長しました。

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