1938年のラジオ (日本)

1938年（昭和13年）の日本のラジオ

1938年は、日本のラジオ放送が国民生活においてその影響力を一層強めた年でした。日本放送協会（NHK）による放送網の地方への拡大が進められる一方、国内外の情勢を反映した多岐にわたる番組が新たに開始され、国民への情報提供や教化、娯楽においてラジオが重要な役割を担いました。

放送網の拡充

この年、日本放送協会は新たな放送局を開設し、全国的なラジオ放送網の整備を推進しました。具体的には、2月26日には北海道の釧路放送局が、そして8月7日には東北地方の盛岡放送局がそれぞれ放送を開始しました。これらの地方局の開局は、都市部だけでなく、より広い地域の人々がラジオ放送を享受できるようになるための重要なステップでした。

新規に開始された主な番組

1938年には、当時の社会情勢や人々のニーズに応えるべく、様々なジャンルの番組が東京中央放送局を中心に新たに開始されました。その内容は、時局解説から教養、娯楽、実用情報まで多岐にわたります。主な開始番組は以下の通りです。

東京中央放送局 第1放送

1月10日には、特定のテーマについて専門家が解説する「特別講演」が放送リストに加わりました。
4月3日からは、一週間の出来事を振り返り、解説する「週間を顧みて」が開始され、聴取者が時事問題を理解する助けとなりました。
5月18日には、国策や国民精神の涵養を目的とした音楽番組と考えられる「国民詩曲」がスタートしました。
7月18日からは、当時の緊迫した国内外の情勢について解説する「ラヂオ時局読本」が始まり、ラジオが重要な情報伝達手段となっていることがうかがえます。
9月6日には、若年層向けの教養や啓発を目的とした「青年の時間」が、また9月12日には国民の安全意識を高めるための「防災訓練注意事項」がそれぞれ開始されました。
10月9日には、軍事的な動向や戦況について解説する「戦局展望」が始まり、当時の戦争遂行体制下におけるラジオの役割を色濃く反映していました。

これらの第1放送で開始された番組からは、時局への対応、国民への情報提供、精神的な鼓舞といった、戦時色が強まりつつあった当時の社会状況がラジオ放送にも影響を与えていたことが見て取れます。

東京中央放送局 第2放送

2月12日には、教養と娯楽を兼ね備えた「教化演芸」が開始されました。
10月1日からは、特定の職業従事者向けの情報提供番組として「店員の時間」がスタートしました。これは、ラジオが一般家庭だけでなく、特定のコミュニティや職業に向けた実用的な情報媒体としても利用され始めていたことを示しています。

第2放送で開始されたこれらの番組は、より教育的あるいは特定の層に向けた専門的な内容を含んでいたと考えられます。

その他の動向

この年には、特定の番組が放送開始周年を迎えたり、放送局が開局周年を祝ったりといった節目がありました。また、残念ながら終了した番組や、特定の目的のために企画された特別番組なども放送されましたが、具体的な番組名や詳細は不明です。

1938年は、ラジオが国民の生活に深く浸透し、情報、教育、娯楽を提供する不可欠なメディアとして発展を続けた年でした。放送網の地方への拡大と、時勢を反映した多様な番組の開始は、その後の日本の放送史における重要な礎となったと言えるでしょう。

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