1938年度の将棋界

1938年度将棋界：激動期における棋士たちの歩み

1938年度(昭和13年4月～昭和14年3月)の将棋界は、激動の時代を反映した出来事が数多く発生しました。日中戦争の影がのしかかる中、棋士たちは盤上だけでなく、社会情勢にも影響を受ける一年となりました。

まず注目すべきは、5月に行われた関根金次郎十三世名人、木村義雄名人の記念対局です。両名による歴史的な対局は、将棋ファンの大きな関心を集めました。結果は木村義雄名人の勝利に終わりましたが、この対局は、昭和期の将棋界を代表する二人の名人の技を後世に伝える貴重な記録となりました。

同月15日には、東京日日新聞と大阪毎日新聞で第2期名人戦挑戦者決定リーグの連載が開始されました。このリーグ戦は、新たな名人を決める重要な舞台として、多くの棋士がしのぎを削る激戦の場となりました。リーグ戦の行方は、翌年度の将棋界を大きく左右する重要な要素となりました。

そして1939年2月、日中戦争の拡大に伴い、新たな局面が訪れます。軍部からの要請を受け、「棋道報国会」は、揚子江にいる海軍将校を慰問するため、塚田正夫七段ら5名の棋士を派遣しました。これは、将棋界が国家的な動向に影響を受けたことを示す象徴的な出来事と言えるでしょう。戦争という時代背景が、棋士たちの活動にも大きな影響を与えたことがわかります。

1938年度の将棋界は、名人戦やリーグ戦といった棋戦に加え、日中戦争という社会情勢も深く関わった一年でした。記録に残る公式戦だけでなく、社会情勢が棋士の活動に大きな影響を与えたことがうかがえます。この時代の将棋界を知る上で、非常に重要な一年であったと言えるでしょう。

これらの出来事は、加藤治郎、原田泰夫、田辺忠幸共著『［証言］将棋昭和史』(毎日コミュニケーションズ、1999年)や、日本将棋連盟『将棋年鑑 昭和43年版』(1968年)といった資料から詳細に知ることができます。これらの文献は、当時の状況を理解する上で貴重な一次史料となっています。 当時の新聞記事なども参照することで、より詳細な状況を把握することができるでしょう。1938年度の将棋界は、戦時下における将棋界のあり方を知る上で重要な時代であり、現代の将棋界を考える上でも重要な教訓を与えてくれると言えるでしょう。

もう一度検索