1944年の日本公開映画

1944年日本公開映画の概観

1944年（昭和19年）は、太平洋戦争の戦況が日本にとってますます厳しさを増していた時期にあたります。この社会情勢は、当然ながら国内の映画界にも多大な影響を与えていました。物資の統制や制作体制の変化が進む中で、劇場での商業公開は続けられました。本稿では、この1944年（昭和19年）1月1日から12月31日までの期間に日本国内で封切られた主な映画作品について記述します。

この年に公開された作品の大部分は日本国内で制作された日本映画でしたが、一部には外国映画も含まれていました。公開された外国映画は、ドイツ、中国、オーストリアといった、当時の日本にとって比較的関係の深かった国々で制作されたものに限られていたようです。以下に、月ごとの主な公開作品を挙げていきます。

月ごとの公開作品一覧

1月

年明け、1月には複数の作品が公開されました。まず、ドイツで制作された『勲功十字章』と『母の瞳』が封切られました。1月3日には日本映画から『おばあさん』と『剣風練兵館』が登場。さらに14日には、同じく日本映画の『韋駄天街道』が公開されました。

2月

2月に入ると、10日に日本映画が二本立てで公開されました。一本は『あの旗を撃て コレヒドールの最後』、そしてもう一本は『天狗倒し』です。

3月

3月には、ドイツ映画『偉大なる王者』が公開されました。日本映画としては、9日に軍隊を題材にした『加藤隼戦闘隊』が、30日には相撲を描いた『土俵祭』がそれぞれ封切られています。

4月

4月の公開作品としては、13日に日本映画の『一番美しく』が挙げられます。

5月

5月は日本映画が複数公開されました。11日には『国際密輸団』と『芝居道』の二作品が、そして25日には『怒りの海』が公開されています。

6月

6月には、8日に日本映画の『歓呼の町』が公開。さらに22日には、『高田馬場前後』と『団十郎三代』の二本が封切られました。

7月

7月にはドイツ映画『リュッツォ爆撃隊』が公開されました。また、6日には日本映画の『三尺左吾平』が登場しました。

8月

8月には、10日に中国で制作された『萬世流芳』が公開されました。そして17日には、日本映画の『五重塔』が封切られています。

9月

9月にはドイツ映画『帰郷』が公開されました。月の後半となる28日には、日本映画から『肉弾挺身隊』と『四つの結婚』の二作品が公開されています。

10月

10月には、オーストリア映画『維納物語』とドイツ映画『謀略戦線』が公開されました。26日には、日本映画の『野戦軍楽隊』が封切られています。

11月

11月の公開作品としては、8日に日本映画の『かくて神風は吹く』が挙げられます。

12月

12月は、この年の劇場公開を締めくくる月となりました。7日には日本映画の『雷撃隊出動』と『陸軍』が公開。そして28日には、日本と中国が共同で制作した『狼火は上海に揚る』、そして日本映画の『宮本武蔵』が封切られ、1944年の映画公開が終了しました。

まとめ

1944年に日本で公開された映画作品は、当時の戦時下という特殊な環境を色濃く反映していました。戦意高揚や国民動員に関連する作品が多く制作・公開される一方で、人々の慰めとなるような娯楽作品も少なからず劇場にかけられました。外国映画の公開は限られていましたが、友好国からの作品は紹介されていたことがわかります。これらの作品は、戦時下の日本の社会や文化を知る上で貴重な記録と言えるでしょう。

もう一度検索