1944年度の将棋界

昭和19年から昭和20年：戦時下の将棋界

昭和19年（1944年）から昭和20年（1945年）にかけての将棋界は、太平洋戦争の激化という時代の大きな影の中で、様々な出来事が起こりました。本稿では、この時代の将棋界の動向を詳しく見ていきます。

名人戦の行方

まず注目すべきは、名人戦です。第4期名人戦では、木村義雄名人が圧倒的な強さを見せつけました。予備手合では、花田長太郎八段、坂口允彦八段といった強豪棋士が挑戦権獲得を目指しましたが、木村名人に敗れ、名人位は木村名人の手中にとどまりました。この結果、木村名人の名人位は継続することとなりました。

その後、昭和19年11月には第5期名人戦が開幕しました。戦争の激化により、対局の開催や棋士たちの生活にも影響が出始めていた時期です。

新たな棋戦の誕生

昭和19年秋には、毎日新聞社主催の「准名人獲得戦」という新たな棋戦が創設されました。これは、第4期名人戦の予備手合に出場した4名によるトーナメント戦であり、坂口允彦八段が優勝しました。この棋戦は、戦時下においても将棋への関心を維持し、盛り上げようとする試みとして注目されました。

しかし、「准名人獲得戦」の三番勝負では、木村義雄名人が坂口允彦八段を2勝1敗で下し、坂口八段は「九段准名人」の称号を逃しました。

戦争の影：悲劇の発生

昭和20年2月18日、関口慎吾六段がニューギニア戦線で戦死するという悲報が届きました。享年28歳（数え年）でした。この出来事は、戦時下における将棋界の痛烈な現実を突きつけました。多くの棋士たちが戦地に赴き、命の危険と隣り合わせで生活していたことを示す象徴的な出来事でした。

戦時下の将棋界の状況

この時代、将棋界は戦争の影響を強く受けていました。物資の不足、移動の制限、そして何より、戦争による人的損失は、将棋界の発展にも大きな影響を与えました。それでも、棋士たちは困難な状況の中、将棋という文化を守り、発展させるために努力を続けました。

参考文献

田辺忠幸『将棋 八大棋戦秘話』河出書房新社、2006年2月16日
加藤治郎、原田泰夫、田辺忠幸『［証言］将棋昭和史』毎日コミュニケーションズ、1999年9月
* 日本将棋連盟『将棋年鑑 昭和43年版』1968年

もう一度検索