1950年のインディ500

1950年5月3日、インディアナポリス・モーター・スピードウェイで第34回インターナショナル500マイル・スィープステークスが開催されました。このレースは、AAAナショナル・チャンピオンシップ・トレイルの一戦であり、同時にF1世界選手権の第3戦として世界選手権ポイントが与えられました。しかし、ヨーロッパからのエントリーはなく、当初出場予定だったジュゼッペ・ファリーナもマシンの到着が間に合いませんでした。

レースは当初200周の予定でしたが、悪天候のため138周で終了しました。優勝したのはジョニー・パーソンズでした。レース中、パーソンズのチームはマシンのエンジンブロックに修復不可能な亀裂を発見したという噂が流れ、彼の優勝への道は険しいものとなりました。しかし、レースが途中で雨により中断されたことで、エンジンが壊れる前にレースが終わったことになり、パーソンズは幸運にも勝利を手にすることができました。後に、このエンジンブロックの亀裂は噂に過ぎなかったことが判明しています。

パーソンズの勝利は、彼をF1世界選手権のポイント争いのトップに押し上げました。彼はジュゼッペ・ファリーナ、ファン・マヌエル・ファンジオと並んでポイントリーダーとなり、アメリカ人として初めてF1世界選手権で優勝を果たしました。インディ500が1950年におけるパーソンズの唯一のF1世界選手権レースであったにも関わらず、彼はランキング6位に相当するポイントを獲得しました。

このレース開催中は、ハリウッドスターのクラーク・ゲーブルとバーバラ・スタンウィックが映画「スピード王」の撮影のためサーキットに滞在していました。スタンウィックは、伝統的な優勝者へのキスをするために、レース後のヴィクトリーレーンに待機していました。

レースの詳細なデータは以下の通りです。

ポールポジション：ウォルト・フォールクナー - 4:27.97
最速リードラップ：ジョニー・パーソンズ - 1:09.77

また、複数のドライバーが交代でマシンをドライブするシェアード・ドライバー制が採用されており、ジョーイ・チットウッドとトニー・ベッテンハウゼン、ヘンリー・バンクスとフレッド・アガバシアン、ベイリス・レヴレットとビル・カントレルといったペアがレースに参加しました。 チットウッドとベッテンハウゼンは5位入賞を果たし、そのポイントは両名で分け合われました。

このレースは、ファイアストンタイヤにとって世界選手権初勝利となりました。

レースはミューチュアル・ブロードキャスティング・システム（後のIMSラジオネットワーク）によってラジオ中継されました。実況はビル・スレーター、リポートはシド・コリンズが担当しました。コリンズは、雨の中、史上初めてヴィクトリーレーンで優勝者インタビューを行いました。この時、コリンズはパーソンズのマシンから排出される高温のエキゾーストパイプでズボンを焦がしてしまったと言われています。

テレビ中継は、インディアナポリスのローカル局WFBM-TVによって2年連続で生中継されました。アナウンサーはアール・タウンゼントジュニア、解説はディック・ピッテンジャーとポール・ロバーツが務めました。しかし、ゲート・アテンダントからの苦情を受けたスピードウェイ側は、WFBMへの再放送を許可しませんでした。

1950年のインディアナポリス500は、天候、ドラマ、そして歴史的瞬間が詰まった忘れられないレースとして記憶されています。

もう一度検索