1953年の日本の女性史
1953年（昭和28年）は、第二次世界大戦後の復興期が進む日本において、女性たちが社会の様々な局面で存在感を示し、変化を求めた一年でした。この時期、女性たちは家庭生活や地域社会のみならず、労働の現場、政治、社会運動など、幅広い分野で活動を展開しました。
平和への願いは強く、各地で反基地運動が展開されました。特に内灘や浅間山の米軍演習地化に反対する動きでは、多くの主婦や婦人団体が陳情や座り込みに参加しました。基地が子供たちの成長環境に与える悪影響を問題視する全国大会も開催されています。
生活を守る運動も活発でした。主婦連合会などは、黄変米の流通停止や米の値上げ反対、安定供給を求め、署名運動やデモを行いました。また、物価高騰に対抗するため、「10円豆腐運動」といった具体的な市民運動も始められました。
女性の政治参加も定着しつつあり、この年の衆参両院議員選挙では、一定数の女性候補者が当選を果たしています。また、婦人団体は地婦連を中心に、選挙における連座制強化への反対署名運動を展開しました。
この年、「日本婦人団体連合会（婦団連）」が結成され、平和憲法擁護、再軍備反対、女性の権利擁護など、広範な目標を掲げ活動の柱としました。超党派で売春禁止法制定を目指す女性議員団も結成されるなど、政治分野での連携も見られました。国際的には、国連で「婦人の参政権に関する条約」が採択され、初の女性総会議長が選出されるなど、女性の地位向上に向けた動きが進展しています。日本からもコペンハーゲンで開催された世界婦人大会への参加が企図されましたが、政府による旅券交付拒否という困難に見舞われ、代表団が到着したのは大会閉会後となる一幕もありました。
女性労働者を取り巻く環境は厳しく、労働条件の改善や差別撤廃を求める動きが各地で起こりました。男女同一労働同一賃金の原則が国際的に勧告される一方、国内では女子職員の定期昇給停止に対する反対闘争や、NHKでの女子嘱託解雇を巡る裁判などが発生しています。
中小零細企業では、劣悪な労働条件に対する争議が相次ぎました。資生堂の下請け工場であるラボーテ工場では、賃金遅配や休暇制度の不備に抗議して組合が結成され、解雇撤回や労働基準法適用を求めた争議の末、工場閉鎖と全員解雇に至りました。泉州タオル産地のツボミタオルでも、女性織子たちが中心となり、越年資金やユニオン・ショップ制を要求するストライキを決行し、翌年勝利を収めました。埼玉県熊谷市の松崎製糸では、退職金制度の実現を求めるストライキ中に、会社側による組合員への暴行事件が発生し、全国的な注目を集めました。これは、近代的な雇用関係が未確立な地方中小企業における女性労働者の困難な状況を浮き彫りにする出来事でした。
大企業でも労働運動は展開されました。福岡銀行では男女差撤廃を含む賃上げや退職金規定改正を求めるストライキ、三井鉱山では人員整理反対ストライキに主婦会が総力を挙げて参加しました。
労働省婦人少年局主催の全国婦人会議が開催され、また全電通婦人部では母性保護（託児所、生理休暇）への取り組みが進められるなど、行政や労働組合の側面からの動きも見られました。
母子家庭への支援は拡充され、生業資金貸付が開始され、母子福祉資金貸付法が改正されました。また、季節保育所の開設が進められ、共働き家庭を支える試みが拡がりました。
戦後の社会が抱える課題として、混血児問題が顕在化しました。小学校への入学が始まり、雑誌でも問題提起がなされました。東京大学教職員組合による共同保育「ゆりかご保育園」の発足は、こうした時代のニーズに応えるものとも言えます。婦人建築家グループ「ポドコ」も保育施設設立計画に協力するなど、子育て支援への関心が高まりました。
身体に障害を持つ女性のためのホーム「ペテスダホーム」が開設されるなど、福祉の面での個人的な取り組みも始まっています。医療分野では、ソ連式無痛分娩が導入され、日本赤十字系病院で採用されるようになりました。
農村地域では、女性たちが主体的に農業経営に関わる試みとして、新潟県で「愛妻田」が設置されました。これは妻が責任者として耕作し、増収分を妻名義で貯金するというもので、女性の経済的自立の一助となりました。農林省主催で農村生活改善の実績発表会も開催されるなど、農村女性の生活向上への取り組みが進められました。
教育の分野では、女子教員に対する退職勧告を巡る問題が表面化しました。また、女子学生の間では「封建制からの脱却」などが議論され、関西や東京で女子学生大会が開催されました。東京都では婦人教育向上のための婦人大会も開催されています。
この年は、新たな商品や流行が生活を彩りました。シームレスストッキングや化学洗剤が登場し、銀座には正式許可のトルコ風呂が開業しました。日本初のクリスチャン・ディオールのファッションショーが開催され、「ディオール旋風」が起きるなど、海外の文化やライフスタイルも流入し始めました。一方で、男女高校生のダンスホール通いが流行したり、『十代の性典』のような性映画が氾濫したりするなど、社会の価値観が揺れ動く様子も見られました。映画では、沖縄戦の悲劇を描いた『ひめゆりの塔』が公開され、多くの人々に戦争の記憶を問いかけました。
また、この年から6月の第3日曜日が父の日と定められ、家族に関する新たな習慣が生まれました。
1953年は、日本の女性たちが自らの権利や生活、そして社会全体の平和と福祉のために声を上げ、行動した年であり、労働、生活、文化など多岐にわたる分野で変化が見られた年でした。困難な状況下でも連帯し、未来へ繋がる一歩を踏み出した、激動の時代における女性たちの多様な姿が刻まれています。
平和への願いは強く、各地で反基地運動が展開されました。特に内灘や浅間山の米軍演習地化に反対する動きでは、多くの主婦や婦人団体が陳情や座り込みに参加しました。基地が子供たちの成長環境に与える悪影響を問題視する全国大会も開催されています。
生活を守る運動も活発でした。主婦連合会などは、黄変米の流通停止や米の値上げ反対、安定供給を求め、署名運動やデモを行いました。また、物価高騰に対抗するため、「10円豆腐運動」といった具体的な市民運動も始められました。
女性の政治参加も定着しつつあり、この年の衆参両院議員選挙では、一定数の女性候補者が当選を果たしています。また、婦人団体は地婦連を中心に、選挙における連座制強化への反対署名運動を展開しました。
この年、「日本婦人団体連合会（婦団連）」が結成され、平和憲法擁護、再軍備反対、女性の権利擁護など、広範な目標を掲げ活動の柱としました。超党派で売春禁止法制定を目指す女性議員団も結成されるなど、政治分野での連携も見られました。国際的には、国連で「婦人の参政権に関する条約」が採択され、初の女性総会議長が選出されるなど、女性の地位向上に向けた動きが進展しています。日本からもコペンハーゲンで開催された世界婦人大会への参加が企図されましたが、政府による旅券交付拒否という困難に見舞われ、代表団が到着したのは大会閉会後となる一幕もありました。
女性労働者を取り巻く環境は厳しく、労働条件の改善や差別撤廃を求める動きが各地で起こりました。男女同一労働同一賃金の原則が国際的に勧告される一方、国内では女子職員の定期昇給停止に対する反対闘争や、NHKでの女子嘱託解雇を巡る裁判などが発生しています。
中小零細企業では、劣悪な労働条件に対する争議が相次ぎました。資生堂の下請け工場であるラボーテ工場では、賃金遅配や休暇制度の不備に抗議して組合が結成され、解雇撤回や労働基準法適用を求めた争議の末、工場閉鎖と全員解雇に至りました。泉州タオル産地のツボミタオルでも、女性織子たちが中心となり、越年資金やユニオン・ショップ制を要求するストライキを決行し、翌年勝利を収めました。埼玉県熊谷市の松崎製糸では、退職金制度の実現を求めるストライキ中に、会社側による組合員への暴行事件が発生し、全国的な注目を集めました。これは、近代的な雇用関係が未確立な地方中小企業における女性労働者の困難な状況を浮き彫りにする出来事でした。
大企業でも労働運動は展開されました。福岡銀行では男女差撤廃を含む賃上げや退職金規定改正を求めるストライキ、三井鉱山では人員整理反対ストライキに主婦会が総力を挙げて参加しました。
労働省婦人少年局主催の全国婦人会議が開催され、また全電通婦人部では母性保護（託児所、生理休暇）への取り組みが進められるなど、行政や労働組合の側面からの動きも見られました。
母子家庭への支援は拡充され、生業資金貸付が開始され、母子福祉資金貸付法が改正されました。また、季節保育所の開設が進められ、共働き家庭を支える試みが拡がりました。
戦後の社会が抱える課題として、混血児問題が顕在化しました。小学校への入学が始まり、雑誌でも問題提起がなされました。東京大学教職員組合による共同保育「ゆりかご保育園」の発足は、こうした時代のニーズに応えるものとも言えます。婦人建築家グループ「ポドコ」も保育施設設立計画に協力するなど、子育て支援への関心が高まりました。
身体に障害を持つ女性のためのホーム「ペテスダホーム」が開設されるなど、福祉の面での個人的な取り組みも始まっています。医療分野では、ソ連式無痛分娩が導入され、日本赤十字系病院で採用されるようになりました。
農村地域では、女性たちが主体的に農業経営に関わる試みとして、新潟県で「愛妻田」が設置されました。これは妻が責任者として耕作し、増収分を妻名義で貯金するというもので、女性の経済的自立の一助となりました。農林省主催で農村生活改善の実績発表会も開催されるなど、農村女性の生活向上への取り組みが進められました。
教育の分野では、女子教員に対する退職勧告を巡る問題が表面化しました。また、女子学生の間では「封建制からの脱却」などが議論され、関西や東京で女子学生大会が開催されました。東京都では婦人教育向上のための婦人大会も開催されています。
この年は、新たな商品や流行が生活を彩りました。シームレスストッキングや化学洗剤が登場し、銀座には正式許可のトルコ風呂が開業しました。日本初のクリスチャン・ディオールのファッションショーが開催され、「ディオール旋風」が起きるなど、海外の文化やライフスタイルも流入し始めました。一方で、男女高校生のダンスホール通いが流行したり、『十代の性典』のような性映画が氾濫したりするなど、社会の価値観が揺れ動く様子も見られました。映画では、沖縄戦の悲劇を描いた『ひめゆりの塔』が公開され、多くの人々に戦争の記憶を問いかけました。
また、この年から6月の第3日曜日が父の日と定められ、家族に関する新たな習慣が生まれました。
1953年は、日本の女性たちが自らの権利や生活、そして社会全体の平和と福祉のために声を上げ、行動した年であり、労働、生活、文化など多岐にわたる分野で変化が見られた年でした。困難な状況下でも連帯し、未来へ繋がる一歩を踏み出した、激動の時代における女性たちの多様な姿が刻まれています。
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