1955年モナコグランプリ

1955年モナコグランプリは、1955年5月22日、モナコ公国のモンテカルロ市街地コースを舞台に開催された、F1世界選手権の第2戦です。このレースはヨーロッパグランプリの名称も冠されており、100周に渡る激戦が繰り広げられました。

5年ぶりにF1がモンテカルロ市街地コースに帰還したこのレースには、メルセデス、フェラーリ、ランチアなど強豪チームがエントリーしました。メルセデスは、市街地コースの特性に合わせたショートホイールベース仕様のW196を投入。ファン・マヌエル・ファンジオとスターリング・モスという強力なドライバー陣を擁していました。しかし、予選ではハンス・ヘルマンがクラッシュし重傷を負うアクシデントが発生。急遽アンドレ・シモンが代役として起用されることとなりました。

予選は、ファンジオ、アルベルト・アスカリ、モスが僅か0.1秒差という接戦となり、決勝レースへの期待感を高めました。決勝レースは、予選の順位通り、ファンジオとモスがメルセデス勢でトップを争い、アスカリ、カステロッティ、ベーラらが追走する展開で始まりました。しかし、50周目にファンジオがトランスミッション故障でリタイアすると、レースは消耗戦へと様相を変えます。

その後、モスがトップに立ち、アスカリが2位、トランティニアンが3位という順位でレースは進みました。しかし、80周過ぎ、トップを走行していたモスがトンネル内で白煙を上げ、スローダウン。メルセデスの勝利はここで潰えました。

トップに躍り出たアスカリでしたが、モスのリタイアを知らぬまま、ペースを維持して走行。ブレーキトラブルを抱えながら、海側のシケインに進入したアスカリは、コース脇の藁束に接触し、コントロールを失ってマシンごと海中に転落しました。幸いにもアスカリは自力で海面へ浮上し、潜水夫に救助され、命に別状はありませんでした。

アスカリの事故により、トップはトランティニアンとなりました。2位のカステロッティが追い上げを見せましたが、ヘアピンでミスを犯し、トランティニアンの優勝が決まりました。トランティニアンとイングルベールタイヤにとって、これはF1初優勝であり、フランス人ドライバーとして初のF1勝利となりました。また、地元モナコ出身のルイ・シロンは6位で完走し、55歳292日というF1最年長出走記録を樹立しました。

このレースからわずか4日後、アスカリは悲劇的な事故死を遂げます。モンツァ・サーキットで練習走行中、クラッシュによりほぼ即死の状態だったと伝えられています。事故原因は究明されませんでした。アスカリの死は、既に資金難に陥っていたランチアに大きな打撃を与え、同チームはGP参戦計画の中止を決定しました。

1955年モナコグランプリは、優勝争いの激しさ、アスカリの事故死という悲劇、そしてモナコという独特の雰囲気などが絡み合い、F1の歴史に刻まれた象徴的なレースとなりました。多くのドラマと、惜しまれるべき事故が同時に起きた、記憶に残る一戦だったと言えるでしょう。

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