1956年の市町村合併

1956年は、日本の地方自治体にとって重要な転換期の一つであり、全国各地で多数の市町村合併が実施された年です。この時期に進められた自治体再編は、後の日本の行政区域や自治体運営の基礎を築く上で大きな影響を与えました。

この年の合併には、主に二つの形態が見られました。一つは、既存の市や町に周辺の村や町が編入される「編入合併」です。これにより、中心となる都市部の規模が拡大しました。例えば、石川県金沢市に石川郡押野村が、静岡県磐田市に磐田郡岩田村が編入された事例や、宮城県仙台市に名取郡生出村が、茨城県水海道市（現在の常総市）に北相馬郡内守谷村と菅生村が加わったケースなどがあります。

もう一つは、複数の町村が新しく合併して、新たな市町村を創設する「新設合併」です。この中には、合併と同時に市制や町制に移行するケースも多く含まれます。奈良県では、高市郡の畝傍町、鴨公村、八木町、今井町、真菅村と磯城郡耳成村が合併して橿原市が誕生し、市制を施行しました。また、茨城県では多賀郡の南中郷村、磯原町など6町村が合体して北茨城市が発足しています。大阪府でも、北河内郡の南郷村、住道町、四条町が合併し大東市が誕生、市制を敷きました。

月ごとの合併件数を見ると、特に9月30日に全国で集中的な合併が実施されたことが特徴として挙げられます。この日だけで、北海道から鹿児島県まで、実に多くの都道府県で数百件に及ぶ合併が行われました。例えば、大阪府では泉北郡の7町村が合併して和泉市が誕生し、市制施行を果たしています。兵庫県では有馬郡の5町村が合併して三田町（後の三田市）が新設されました。和歌山県では西牟婁郡内の複数町村が合併して牟婁町や富田川町などが誕生しています。広島県では福山市が周辺の10市町村（一部は村の一部）を編入するなど、既存の市の規模が大幅に拡大した例も多く見られました。高松市や飯田市も同様に、多くの町村を編入して規模を拡大しています。

また、一つの村の一部が分割され、複数の隣接自治体に編入されるといった、境界変更を伴う複雑な合併も確認できます。岡山県勝田郡公文村の一部が英田町と美作町に分かれて編入された事例や、愛知県海部郡永和村の一部が蟹江町、十四山村、佐屋町、津島市に分割編入された例などがあります。

この1956年の市町村合併は、自治体の財政基盤の強化や行政サービスの効率化などを目的として推進された「昭和の大合併」と呼ばれる一連の流れの中で行われたものです。この大規模な再編を経て、日本国内の市町村数は大幅に減少しました。これにより、今日の日本の地方自治体の骨格が形成されることとなりました。

このように、1956年は全国的に多数の自治体で区域の変更や再編成が行われた、日本の市町村の歴史において極めて活動的な一年であったと言えます。

もう一度検索