1956年の航空

1956年の航空史における重要な出来事

1956年は、航空技術と航空業界の両面で数多くの重要な出来事が起こった年でした。この年、世界速度記録の更新、ジェット旅客機の商業運航開始、そして悲惨な航空事故など、様々な出来事が記録されました。これらの出来事は、その後の航空業界の発展に大きな影響を与え、航空技術の進歩を加速させる原動力となりました。

世界記録の更新と実験機の活躍

この年、イギリスのピーター・ツィスは、フェアリー デルタ2で時速1,821kmという驚異的な世界速度記録を樹立しました。また、アメリカの実験機ベルX-2も、フランク・エベレストによってマッハ2.93という速度記録を更新し、その性能の高さを世界に示しました。さらに、アイヴン・キンチェローはベルX-2で高度38,466mを記録し、高度記録も更新しました。しかし、実験機ベルX-2は、ミルバーン・アプトが搭乗した際に操縦不能に陥り、アプトは命を落とすという悲劇も起きました。

軍事航空の進展

軍事航空の分野でも、重要な進展が見られました。アメリカ軍は、B-52 ストラトフォートレスを使ってビキニ環礁に3.75メガトンの水素爆弾を投下しました。また、アメリカ海軍は最初のヘリコプター母艦USS Thetis Bayを就航させ、新たな戦術の可能性を広げました。西ドイツではドイツ空軍が再建され、ヨーロッパの安全保障体制に変化をもたらしました。さらに、イギリス空軍はビッカース ヴァリアントを使用してオーストラリアで原子爆弾の投下実験を行いました。

航空事故と安全対策の強化

1956年には、航空史上まれに見る大規模な航空事故が発生しました。ユナイテッド航空のダグラス DC-7とトランス・ワールド航空のロッキード スーパーコンステレーションがアリゾナ州のグランドキャニオン上空で空中衝突し、128名もの犠牲者を出す大惨事となりました。この事故は、FAA（連邦航空局）の設置など、航空安全規制の大幅な見直しを促すきっかけとなりました。

新技術の登場と宇宙への挑戦

ソビエト連邦では、ジェット旅客機Tu-104がアエロフロートの営業路線に導入され、ジェット旅客機による商業運航が始まりました。これは、アメリカよりも早くジェット旅客機による商業運航を確立した事例として特筆されます。また、垂直離着陸機ライアンX-13が垂直飛行から水平飛行への遷移に成功し、新たな航空機の可能性を示しました。さらに、アメリカのマルコム・ロスとモートン・L・ルイスは、気球で高度23,000mに到達し、これまでの記録を更新しました。

その他の出来事

その他にも、アメリカ海軍のR4Dスカイトレインが初めて南極点に着陸するという快挙を成し遂げました。また、アメリカ海軍の無人標的機F6F-5Kが制御不能になり、空軍機によって撃墜を試みましたが、失敗し地上に火災を発生させるという珍しい事態も発生しました。さらに、中華人民共和国では、ソ連のMiG-17のライセンス生産機であるJ-5（殲撃五型）が初飛行しました。

受賞者

これらの功績を讃え、フランク・エベレスト、ジャクリーヌ・オリオール、マルコム・ロス、モートン・ルイスはハーモン・トロフィーを受賞しました。また、ピーター・ツィスはFAI・ゴールド・エア・メダル、シーグレーブ・トロフィー、デラボー賞を受賞しました。

まとめ

1956年は、航空史において技術的進歩と同時に、安全対策の重要性が浮き彫りになった年でした。これらの出来事は、その後の航空業界の発展に大きな影響を与え、現在もなお、私たちの空の旅を支える基盤となっています。

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