1958年のテレビ (日本)

1958年（昭和33年）は、日本のテレビ放送史において、まさに発展期を象徴する一年でした。この年、テレビは冷蔵庫、洗濯機と並ぶ「三種の神器」と呼ばれる憧れの家電製品として、一般家庭への普及が本格的に加速しました。

全国に広がるテレビの波：地方局開局ラッシュ

前年にVHFアナログ放送の予備免許が多数交付されたことを受け、この年は全国各地で新しいテレビ放送局の開局が相次ぎました。

公共放送であるNHKは、熊本、鹿児島を皮切りに、富山、高知、新潟、長崎、岩手といった各県で続々と放送を開始。特に長野では、それまで東京からの電波を受けていた善光寺平中継局に代わり、美ヶ原送信所からの県域放送が始まり、放送エリアが拡大しました。

民放もこの動きに追随し、福岡のラジオ九州（現・RKB毎日放送）を皮切りに、大阪では読売テレビ放送、関西テレビ放送、名古屋では東海テレビ放送、福岡ではテレビ西日本などが開局。この一年だけで全国で12もの民放テレビ局が誕生し、テレビの視聴可能エリアが飛躍的に広がりました。

インフラと技術の革新：VTR導入と東京タワー完成

放送技術とインフラ面でも大きな進歩が見られました。

1956年にアメリカで実用化された放送用モノクロVTRが、アメリカ以外では日本で初めて導入されたのがこの年です。4月には大阪テレビ放送（現・朝日放送テレビ）に、5月にはラジオ東京（KRテレビ、現・TBSテレビ）に搬入され、6月には運用が開始されました。NHKでも導入が進み、このVTR技術によって、それまで生放送が中心だったテレビ番組の制作スタイルに多様性が生まれ始めました。

そして12月23日には、日本のテレビ放送の象徴ともなる東京タワーが完成しました。高さ332.6メートルのこの電波塔は、NHK、KRテレビが既存の送信所から移転し、翌年開局する日本教育テレビ（現・テレビ朝日）とフジテレビを含め、首都圏の主要テレビ局の電波送信拠点となりました。これにより、関東一円への安定した電波供給体制が確立されました（日本テレビは独自のタワー計画を進めていたため、しばらくは麹町からの送信を続けました）。

歴史に残る名作と新しい番組の誕生

番組制作においても、後世に語り継がれる出来事がありました。

KRテレビは、この年の芸術祭参加作品として、二つの画期的な単発ドラマを放送しました。特に10月31日放送の『私は貝になりたい』は、戦争の不条理を描いた衝撃的な内容とフランキー堺の熱演で大反響を巻き起こし、芸術祭大賞を受賞。テレビドラマ史における金字塔として知られています。11月16日放送の『マンモスタワー』も芸術祭奨励賞を受賞しています。

レギュラー番組でも、NHKの社会派ドラマ『事件記者』や帯ドラマ『バス通り裏』、KRテレビの国民的ヒーロー番組『月光仮面』、長寿歌番組となる『ロッテ 歌のアルバム』、大阪テレビのコメディ『やりくりアパート』や長期シリーズとなる刑事ドラマ『部長刑事』など、多くの人気番組がスタートしました。

VTRを使用した番組も登場し、大阪テレビの『ちんどん屋の天使』が日本初のVTR収録番組として、KRテレビの『デン助の裏町人情』が在京局初のVTR使用番組として放送されました。また、この年の金環日食に際しては、NHKとKRテレビが特別番組を組み、日本テレビはカラーフィルムによる世界初のカラーニュース放送を『NTVニュースフラッシュ』内で行うなど、速報性や表現力の追求も始まっていました。

カラーテレビ時代の幕開けへ

将来を見据えたカラーテレビの実験放送も進展しました。日本テレビは1月から実験放送を定時化し、自社初のカラーフィルム番組『七色のメロディー』や日本初のカラーアニメ『もぐらのアバンチュール』を制作・放送。12月には初のスタジオカラーカメラを使った生放送『手品教室』を行うなど、積極的にカラー放送技術の開発と番組制作に取り組みました。

このように1958年は、テレビが文字通り「茶の間の主役」へと躍り出て、全国津々浦々へその影響力を広げ始めるとともに、技術面でも制作面でも大きな飛躍を遂げた、日本のテレビ史における極めて重要なターニングポイントとなった年と言えるでしょう。

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