1960年のオールスターゲーム (日本プロ野球)

1960年のプロ野球オールスターゲーム

1960年の7月に開催された日本プロ野球のオールスターゲームは、この国民的イベントにとって記念すべき第10回目の節目となる大会でした。例年とは異なり、この年は特別に3試合制で行われ、全国の野球ファンを熱狂させました。指揮を執ったのは、前年に初の日本一を達成した南海ホークスの鶴岡一人監督率いるパシフィック・リーグ選抜（全パ）と、セントラル・リーグを制した読売ジャイアンツの水原茂監督が率いるセントラル・リーグ選抜（全セ）です。両リーグの精鋭たちが、威信をかけて激突しました。

大会は、第1戦を全パが制し、続く第2戦は全セが勝利。そして勝敗の行方を決める第3戦も全パがものにし、最終的に全パが2勝1敗でこの記念大会を制覇しました。各試合で熱戦が繰り広げられ、随所にスター選手の輝きが見られました。

この大会で特筆すべき選手として、後の野球史に燦然と輝く二人のスラッガーが初めてオールスターの舞台を踏みました。一人は読売ジャイアンツの若き才能、王貞治選手です。彼はこの年、初めてファン投票によってオールスターメンバーに選出されました。この選出を皮切りに、王選手は引退する1980年までの21年間（1965年は出場辞退）、一度もファン投票のトップの座を譲ることなく、球界随一の人気選手であり続けたのです。これは、彼の卓越した実力と並外れた人気を物語る驚異的な記録です。

もう一人は、東映フライヤーズに所属していた張本勲選手です。彼もまた、この1960年にオールスター初出場を果たしました。プロ入り間もない張本選手でしたが、この球宴で早速その才能を遺憾なく発揮します。特に第3戦での活躍は目覚ましく、見事にこの試合の最優秀選手（MVP）に選ばれるという鮮烈なデビューを飾りました。後の「安打製造機」としての偉大なキャリアを予感させる活躍でした。

さらに、この記念大会では、プロ野球のオールスターゲーム史上初となる、いくつかの珍しい記録が誕生しました。第2戦では、全パの半田春夫選手（南海ホークス）が、全セの板東英二投手（中日ドラゴンズ）から、オールスターゲーム史上初めてとなるランニング本塁打を記録しました。広い球場を駆け巡ってホームに滑り込むこの本塁打は、観衆を大いに沸かせたことでしょう。そして、第3戦では、全セの巽一投手（国鉄スワローズ）が、全パの米田哲也投手（阪急ブレーブス）から、こちらもオールスターゲーム史上初となる、投手自身による本塁打を放ちました。打撃専門ではない投手が、パ・リーグを代表する好投手から本塁打を打つという出来事は、球宴ならではの予期せぬドラマとして記憶に刻まれました。

この大会は、テレビやラジオでも全国に中継され、多くの野球ファンがその熱戦を見守りました。特に第2戦のテレビ中継では、オールスターゲームのテレビ放送史上初めてカラー放送が実施されるなど、メディア側も大会を盛り上げるための新たな試みを行っていました。

1960年のオールスターゲームは、若きスター選手の誕生、歴史的な珍記録の樹立、そして記念大会にふさわしい熱戦が展開された、後世に語り継がれるべき大会となりました。この大会を通じて、プロ野球の人気はさらに確固たるものとなり、多くの人々に夢と感動を与えたのです。

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