1960年アルゼンチングランプリ

1960年のF1世界選手権が開幕したアルゼンチングランプリ。舞台は、アルゼンチンの首都ブエノスアイレス近郊に位置するオスカル・ガルベス・サーキットです。1960年2月7日、世界中のモータースポーツファンが注目する中、この歴史的なレースがスタートしました。

このレースは、ブルース・マクラーレンにとって2年連続の優勝、そして前年の最終戦からの連勝という偉業達成の瞬間となりました。彼の卓越したドライビングスキルとマシンの信頼性が、勝利の鍵となったと言えるでしょう。一方、スターリング・モスは、レース中にサスペンショントラブルに見舞われ、3位という結果に終わりました。彼は、モーリス・トランティニアンのクーパーを継いでレースを続行しましたが、当時から存在した車両共有のルールにより、残念ながらポイントは獲得できませんでした。この車両共有ルールは、1958年から導入されていたもので、ドライバー間の協力と競争の両面が複雑に絡み合うF1レースの様相を象徴するものでした。

このアルゼンチングランプリは、多くのドライバーにとって忘れられないレースとなりました。ベネズエラ人ドライバーのエットーレ・チメリは、このレースがF1における唯一の参戦となりました。彼は、ベネズエラ人として初めてF1の舞台に立ったパイオニアであり、その勇姿は多くの後世のドライバーたちに勇気を与えたことでしょう。しかし、レースからわずか2週間後、彼はハバナでフェラーリ250TRを運転中に事故死するという悲劇に見舞われました。彼の早すぎる死は、モータースポーツ界に深い悲しみをもたらしました。ベネズエラ人ドライバーが再びF1の舞台に立つのは、それから23年後、ジョニー・チェコットが参戦するまで待つことになります。

他にも、アントニオ・クレウス、アルベルト・ロドリゲス・ラレッタ、ロベルト・ボノーミなど、このレースがF1での最初で最後のレースとなったドライバーが複数存在しました。彼らのF1への夢と情熱、そしてこのレースへの挑戦が、モータースポーツの歴史に刻まれています。さらに、フェラーリのF1初勝利に貢献したフロイラン・ゴンザレスと、ベテランアメリカ人ドライバーのハリー・シェルにとって、このレースは最後のF1レースとなりました。シェルは、その後ノンタイトル戦のシルバーストンでのプラクティス中に事故死するという悲劇に見舞われています。

地元アルゼンチンのドライバーたちも、このレースに参戦しました。ペドロ・リャノ、ロドリゲス・ラレッタ、ナシフ・エステファーノの3名がプラクティスに参加しました。スクーデリア・セントロ・スッドのマセラティを駆る彼らですが、予選や決勝ではドライバーの入れ替えがあったようです。また、ジュリオ・ポーラはエットーレ・チメリのマセラティをドライブし、オスカル・カバレンはリザーブドライバーとしてエスティファーノ車と予選セッションを共有しました。この様に、多くのドライバーが様々な形でこのレースに関わっていたことが伺えます。

1960年アルゼンチングランプリは、勝利と悲劇、そして数々のドラマが凝縮された、忘れられないF1レースとして、モータースポーツの歴史に刻まれています。このレースを境に、F1は新たな時代へと突入していったのです。この後、アルゼンチングランプリが再開されるまでには、12年の歳月が流れます。1972年、再びアルゼンチンでF1の戦いが繰り広げられることになります。

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