1962年のラジオ (日本)

1962年の日本のラジオ界

1962年は、日本のラジオ放送が技術的な進歩とネットワークの拡大を遂げた重要な一年でした。この年、FM放送の本格的な展開が始まり、ステレオ放送の実用化に向けた実験が積極的に行われるなど、次世代のラジオ放送への道が開かれました。

FM放送の進展とステレオ実験

FM放送網の拡大は、この年の最も顕著な動きの一つです。NHKは、9月17日に広島と福岡で、さらに12月2日には札幌、仙台、名古屋、松山、熊本といった主要都市で立て続けにFM放送を開始しました。これにより、FM放送が都市部を中心に聴取可能な地域を広げ始めました。

また、より高音質なステレオ放送の実用化に向けた技術実験も活発に行われました。TBSは6月30日、AM電波を使ったステレオ実験局（コールサイン：JO2KR）の免許を取得。翌月の7月21日からは、毎週土曜日と日曜日の放送終了後、30分から45分間にわたり、AM1波によるステレオ実験放送を開始しました。これは、AM放送におけるステレオ化の可能性を探る画期的な試みでした。

NHKの東京FM実験局でも、ステレオ放送方式の比較検討が進められました。7月と9月には、電波技術協会ステレオ委員会の調査に協力する形で、当時検討されていたAM-FM方式（現在の日本方式）と、FM東海が実験していたFM-FM方式（クロスビー方式）という異なる二つの方式によるFMステレオ放送の電波発射実験を行いました。これらの実験は、将来のFMステレオ放送方式を決定する上で貴重なデータを提供しました。

新しい試みと放送局の動き

放送スタイルにおいても、聴取者との新しい関係性を築く試みが生まれました。ニッポン放送は11月3日、小田急百貨店新宿店に設けられたスタジオから公開生中継放送を開始しました。これは、日本で初めてのサテライトスタジオからの放送であり、リスナーが放送現場を身近に感じられる機会を提供し、その後の公開放送スタイルの先駆けとなりました。

放送局のネットワークも拡大しました。年末の12月15日には、札幌テレビ放送がラジオ放送を開始（現在のSTVラジオ）。また、12月24日にはラジオ岐阜（現在の岐阜放送）が開局しました。これらの新局開局は、それぞれの地域におけるラジオ放送の拠点が増えたことを意味します。さらに、年の初めである1月1日には、ラジオ高知が「高知放送」へと商号を変更しています。

番組編成の動向

この年は、多岐にわたる新番組が登場し、聴取者の選択肢が広がりました。特に注目されたのは、1月1日にNHKラジオ第1・第2で放送された立体（ステレオ）放送の特別番組「新春ステレオホール」です。これはステレオ放送の可能性を広く紹介する機会となりました。

年間を通じて、NHKでは、ニュース・情報番組として「交通情報」や「あすは晴れるぞ」、文化・教育番組として「ラジオ小劇場」「古典をたずねて」「中学生の勉強室」「通信教育のしおり」などが開始されました。民放各局でも、朝日放送の「ソノラマジョッキー」、ラジオ関東の「エアポート・ニュース」、大阪放送の「OBCもしもしセンター」「はんじ・けんじのニュース法廷」「奥様コーナー」、文化放送の「全国歌謡ベストテン」「全国ポピュラーベストテン」、ニッポン放送の「ゴールデン・キャッチ・フレーズ」など、音楽、情報、バラエティといった様々なジャンルの新番組が始まりました。一方で、長年にわたり親しまれたNHKラジオ第1の「ラジオ歌謡」や「尋ね人」が終了するなど、番組編成の新陳代謝も進みました。

1962年は、日本のラジオ放送が技術革新と放送網の拡大、そして番組内容の多様化を通じて、次なる発展段階へと足を踏み出した変革期であったと言えるでしょう。

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