1962年南アフリカグランプリ

1962年のF1世界選手権最終戦、南アフリカグランプリが12月29日、プリンス・ジョージ・サーキットで開催されました。このレースは、ドライバーズチャンピオンシップの行方を決定づける重要な一戦でした。

ポイントランキング首位にいたのはBRMのグラハム・ヒル。しかし、2位につけるロータスのジム・クラークとはわずか9ポイント差という僅差でした。当時、有効ポイントはベスト5戦のみカウントされるシステムだったため、クラークが優勝すれば、ヒルの成績に関わらず逆転でチャンピオンに輝く可能性があったのです。

レースは、クラークがポールポジションを獲得してスタート。終盤まで首位をキープし、逆転チャンピオンへの期待が高まりました。しかし、残り20周というところでオイル漏れが発生し、クラークはリタイアを余儀なくされます。このアクシデントにより、ヒルのチャンピオン獲得が確定しました。ロータスチームにとっては、レース終盤でのマシントラブルという苦い結果となりました。

クラークのリタイア後、首位に立ったヒルはそのままフィニッシュ。見事4勝目を挙げ、念願の初ドライバーズチャンピオンを獲得しました。さらに、この優勝はBRMにとって唯一となるコンストラクターズチャンピオン獲得をもたらす結果となりました。

2位にはクーパーのマクラーレンが入り、モナコGP優勝を含む7度の入賞でシーズンを締めくくりました。ランキングはヒル、クラークに次ぐ3位となりました。地元南アフリカ出身のトニー・マグス（クーパー）は3位表彰台を獲得し、地元ファンの歓喜を誘いました。4位にはブラバムが入賞し、2戦連続の入賞を果たしました。

一方、フェラーリはアメリカGPに続いてこのレースも欠場しました。前年のコンストラクターズチャンピオンだったにもかかわらず、今シーズンは未勝利に終わり、ランキング6位という結果に終わりました。さらに、11月初旬に行われた非選手権レースであるメキシコGPでは、地元メキシコ出身のリカルド・ロドリゲスが予選中の事故で亡くなるという悲劇に見舞われました。ロドリゲスは、フェラーリの欠場により、ロブ・ウォーカー・レーシングチームからロータスで参戦していました。この事故は、フェラーリにとってだけでなく、F1界全体に衝撃を与えました。また、ポルシェもこのレースを欠場し、フランスGPでの1勝のみでF1からの撤退を決めました。ワークス参戦開始からわずか2年での撤退は、彼らのF1挑戦の幕切れとなりました。

この南アフリカGPは、F1世界選手権の一戦として初めて南アフリカで開催されたレースでした。そのため、南アフリカや隣国のローデシア・ニヤサランド連邦出身のドライバーやコンストラクターがF1デビューを果たすという歴史的な出来事となりました。ネビル・レデールは、このレースが唯一のF1出走となりましたが、6位入賞という素晴らしい結果を残しました。

タイヤは全車ダンロップを使用していました。多くのドラマと歴史的出来事が詰まった1962年南アフリカグランプリは、F1の歴史に大きな足跡を残しました。

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