1965年のラジオ (日本)

1965年は、日本のラジオ放送界にとって多くの重要な動きがあった年です。特に、全国規模のネットワークが形成されたこと、そしてFM放送の整備が進んだことが特筆されます。

ラジオネットワークの誕生

この年、日本の民間ラジオ放送局間の連携を深める二つの大きなネットワークが相次いで発足しました。5月2日にはTBSラジオをキー局とするジャパン・ラジオ・ネットワーク（JRN）が、翌5月3日には文化放送とニッポン放送をキー局とする全国ラジオネットワーク（NRN）が誕生しました。これらのネットワークは、ニュース、音楽、ドラマなどの番組供給や共同制作、営業活動などにおいて、加盟局間の連携を強化する基盤となり、その後の日本のラジオ放送のあり方に大きな影響を与えました。

FM放送の進展とステレオ放送の変化

この年は、NHKによるFM放送の整備が全国主要地域で急速に進んだ時期でもあります。2月から3月にかけて、釧路、福井、甲府、徳島、大分、高松、佐賀、北見といった各地で次々とNHK-FMの実験局が開局しました。これにより、奄美地方など一部離島地域を除く全国主要地域でのNHK-FMの実験局整備が完了しました。FM放送のステレオ化が進む中で、それまで暫定的に行われていたAM（中波）ラジオ第1・第2の2波を用いたステレオ（立体）放送は、その役割を終えました。NHKは4月3日の『夜のステレオ』最終回をもってAM2波ステレオを終了。また、文化放送とニッポン放送が共同で行っていたAM2波ステレオ放送も、10月24日の番組を最後に幕を下ろしました。

番組の動き

1965年には、春の改編を中心に多くの新番組が誕生し、長年親しまれた番組が終了しました。特に4月には、NHKラジオ第1、第2、FMで多様なジャンルの番組が開始されました。ラジオ第1では『くらしのリズム』『ミュージックサロン』といった生活に根ざした番組や、『世界冒険物語』『夢のハーモニー』などのエンターテインメント番組、また『一人一話』のような教養番組が登場しました。ラジオ第2では『漁村のみなさんへ』『新しい農村』といった地域・特定の聴取者に向けた番組や、『続基礎英語』『音楽夜話』『老後をたのしく』などが始まりました。NHK-FMでは、『ステレオコンサート』『人と思想』『歴史読本』など、FMの特徴を活かした文化・教養・音楽番組が充実しました。民放でも、ニッポン放送の長寿番組『テレフォン人生相談』（1月30日開始）や、中部日本放送の『0時半です松坂屋ですカトレヤミュージックです』（3月29日開始）、文化放送のドラマ『白い巨塔』（8月2日開始）などがこの年に放送を開始しています。

一方、惜しまれながら終了した番組もあります。NHKラジオ第1の連続番組『お父さんはお人好し』は3月29日に最終回を迎えました。TBSラジオの『浪曲天狗道場』は6月28日に、そして先に述べたAM2波ステレオ番組も、FMへの移行期を象徴するように終了しています。

また、長寿番組が大きな節目を迎えた年でもありました。朝日放送の『蝶々・雄二の夫婦善哉』が2月1日に放送500回を達成し、ハワイでの公開録音を放送するという華やかな記念回を迎えました。TBSラジオの『昼の話題』も8月20日に放送2500回を数えました。

その他の出来事

ラジオ界では、悲しい出来事も起こりました。9月18日、台風24号が接近する中、東京・晴海埠頭で被害状況を取材していたラジオ関東（現：ラジオ日本）の中継車が強風にあおられて海中に転落。この事故により、懸命に取材にあたっていたアナウンサーやスタッフら尊い6名の命が失われました。

1965年は、ラジオネットワークの形成、FM放送の整備、そして大規模な番組改編など、その後の日本のラジオ放送の発展を方向づける重要な転換点となった一年と言えるでしょう。

もう一度検索