1965年のル・マン24時間レース

1965年、フランスのサルト・サーキットで開催されたル・マン24時間レースは、自動車史に輝く激戦として記憶されています。33回目の開催となるこのレースには、51台のマシンがエントリー。フォードはフェラーリへの挑戦を続け、GT40を6台、ACコブラを5台という圧倒的な台数を投入しました。これに対し、フェラーリはワークスチームとして330P2を、そしてN.A.R.Tチームは250LMを投入しました。また、革新的なガスタービンエンジンを搭載したローバー・BRMも参戦し、注目を集めました。

それまでの耐久レースでは、完走を最優先し、無理なく自分のペースで走るのが常識でした。しかし、1965年のル・マンは異なっていました。レース前半から驚異的な速さで展開され、その後、耐久レースの様相は大きく変化することになります。それは「相手を寄せ付けないペースで走り続け、生き残ったマシンが勝利する」という新たな戦術が主流になったということです。

レースは、フォードとフェラーリのトップ争いが繰り広げられました。フォード陣営はGT40を投入し、フェラーリワークスチームの330P2と激しいトップ争いを展開しました。しかし、フォードGT40とフェラーリ330P2は次々とリタイヤし、レース終盤には多くのマシンが脱落していきました。

激しい戦いを終え、24時間走りきった14台の内の優勝を手にしたのは、N.A.R.Tチームのマステン・グレゴリーとヨッヘン・リントがドライブしたフェラーリ250LMでした。21号車として参戦したこのマシンは、24時間で4677.110kmを走りきり、平均時速194.880km/hという驚異的な速度を記録しました。この勝利でフェラーリは6連勝、通算9勝目を達成し、その強さを改めて世界に示しました。一方、革新的なガスタービンエンジンを搭載したローバーBRMは10位という結果に終わりました。

1965年のル・マン24時間レースは、フォードの挑戦とフェラーリの伝統が激しくぶつかり合った象徴的なレースでした。フォードの物量作戦と、フェラーリの洗練された技術力の対比は、自動車レースの歴史において重要な転換点となり、耐久レースの戦術に大きな影響を与えました。このレースを機に、「限界まで攻める走り」と「いかにトラブルを回避するか」という二つの要素が、耐久レースにおける勝利の鍵となりました。

このレースに関する記録や考察は、数多くの文献に記されています。例えば、『ルマン 伝統と日本チームの戦い』(グランプリ出版)、ドミニク・パスカル著『ル・マンの英国車』(ネコ・パブリッシング)、黒井尚志『ル・マン 偉大なる草レースの挑戦者たち』(集英社)といった書籍は、このレースの詳細や背景、そしてその後の耐久レースへの影響について詳しく解説しています。これらの文献を参照することで、1965年のル・マン24時間レースの意義と歴史的価値をより深く理解することができます。

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