1965年のロードレース世界選手権

1965年のFIMロードレース世界選手権は、3月のデイトナ・インターナショナル・スピードウェイでのアメリカGPから始まり、11月、鈴鹿サーキットで開催された日本GPで幕を閉じました。チェコスロバキアGPが世界選手権に昇格したことにより、この年は全13戦という大規模なシリーズとなりました。

技術革新の時代

このシーズンは、各メーカーによる技術開発競争が激化しました。特に小排気量クラスでは、ホンダの4ストロークエンジンと、ヤマハ、スズキの2ストロークエンジンの対決が大きな注目を集めました。ヤマハは125ccクラスに水冷2気筒エンジンを搭載し、シーズン終盤には250ccのV型4気筒エンジンも投入。スズキも250ccと125ccクラスに水冷エンジンを採用し、50ccクラスには水冷2気筒エンジンを投入しました。ホンダは前年の250cc6気筒に加え、125cc5気筒エンジンの開発をスタートさせ、最終戦でその実力を示しました。さらに、最高峰クラスへの参戦を目指し、350ccマシンをベースとした500ccマシンの開発も進めていました。

MVアグスタとホンダの対立

500ccクラスでは、MVアグスタの4気筒マシンが圧倒的な強さを誇り、マイク・ヘイルウッドが10戦中8勝を挙げて4連覇を達成しました。しかし、350ccクラスでは、ホンダのパワフルなマシンに苦戦しました。MVアグスタは新型の4バルブ3気筒マシンを開発しましたが、このマシンは新人のジャコモ・アゴスチーニに優先的に与えられ、ヘイルウッドは旧型マシンを駆ることとなりました。この待遇の差は、ヘイルウッドとMVアグスタの関係を決定的に悪化させました。最終戦の日本GPで350ccクラス優勝を果たしたヘイルウッドは、レース後にMVアグスタを離れ、ホンダに移籍しました。

各クラスの戦況

350ccクラスでは、MVアグスタの新型3気筒マシンと、ホンダの改良型4気筒マシンの戦いがシーズンを通して繰り広げられました。アゴスチーニとジム・レッドマン（ホンダ）の争いは、最終戦までタイトルを争う接戦となりました。最終的にホンダが4年連続のタイトルを獲得しました。

250ccクラスでは、ヤマハのフィル・リードとホンダのレッドマンが優勝を争いました。リードが2年連続のタイトルを獲得しました。最終戦の日本GPでは、ヘイルウッドがホンダに移籍後初勝利を飾りました。

125ccクラスでは、スズキとホンダがタイトルを争いました。スズキのヒュー・アンダーソンが1963年以来となるタイトルを獲得しました。ホンダは最終戦日本GPで125cc5気筒マシンを投入しましたが、タイトル獲得には至りませんでした。

50ccクラスでは、スズキとホンダが激しい争いを繰り広げ、最終的にホンダのラルフ・ブライアンズが初タイトルを獲得しました。これは、50ccクラスで4ストロークエンジンがタイトルを獲得した唯一の例です。

日本GP

毎年、日本のメーカーによる新型マシンの発表の場となっていた日本GPでは、ホンダが125cc並列5気筒という革新的なマシンを投入しました。また、カワサキが2ストローク2気筒マシンでグランプリに初参戦しました。

1965年のロードレース世界選手権は、各メーカーの技術革新と、ドライバーたちの熱い戦いが織りなす、記憶に残るシーズンとなりました。

もう一度検索