1984年ニューヨーク・ストークマンデビルパラリンピック

1984年ニューヨーク・ストークマンデビルパラリンピック

1984年に開催された第7回夏季パラリンピックは、米国ニューヨーク市と英国ストーク・マンデヴィルという、二つの異なる国、異なる場所、そして異なる時期に行われた極めて異例の大会でした。この大会は通常「ニューヨーク・ストークマンデビル1984」と呼ばれ、「ニューヨーク・アイレスベリーパラリンピック」と表記されることもあります。この分離開催という特殊性は、大会の歴史において大きな注目を集める要因となりました。

分離開催の経緯

当初の計画では、第7回夏季パラリンピックはアメリカ合衆国内の二つの州、ニューヨーク州とイリノイ州で開催される予定でした。それぞれの開催地では、特定の障害クラスに限定した競技が行われることになっていました。具体的には、ニューヨーク州では切断者、視覚障害者、脳性麻痺者のための競技が、そしてイリノイ州では脊髄損傷者のための競技が計画されていました。しかし、大会開催のわずか半年前になって、イリノイ州が財政的な問題を理由に開催を断念せざるを得ない状況となりました。これにより、脊髄損傷者の競技の開催地が失われるという緊急事態が発生しました。

この窮状に対し、国際ストークマンデビル競技連盟が受け皿となり、英国バッキンガムシャー州アイルズベリーにあるストーク・マンデヴィル病院で、脊髄損傷者のための大会を開催することが決定されました。この大会は「第7回世界車椅子競技大会」としても位置づけられることになり、結果として、ニューヨークでの大会（1984年6月17日～6月30日）と、ストーク・マンデヴィルでの大会（1984年7月22日～8月1日）が時期をずらして実施されることになったのです。このように、パラリンピック史上唯一ともいえる分離開催という形式が生まれました。

日本人選手の活躍

二つの会場に分かれての開催となった今大会ですが、日本選手団は両会場で奮闘し、多くのメダルを獲得しました。

ニューヨーク会場でのメダリスト

ニューヨーク会場では、主に切断、視覚、脳性麻痺のクラスの選手が出場しました。日本からは以下の選手がメダルを獲得しています。

金メダル（3個）
小林敏子（陸上 女子100m C8）
小林敏子（陸上 女子幅跳び C8）
尾崎峰穂（陸上 男子幅跳び B2）

銀メダル（2個）
小林敏子（陸上 女子200m C8）
尾崎峰穂（陸上 男子三段跳び）

銅メダル（6個）
小林敏子（陸上 女子400m C8）
井上悦男（競泳 男子100m平泳ぎ A3）
井上悦男（競泳 男子100m 自由形 A3）
尾崎峰穂（陸上 男子円盤投げ B2）
島津良範（陸上 男子100m B3）
池田佳子・玉舎奈保子（ローンボウルズ 女子ダブルス）

ストーク・マンデヴィル会場でのメダリスト

ストーク・マンデヴィル会場は、脊髄損傷クラスの選手の競技が中心でした。特に陸上競技のスラローム種目で多くのメダルを獲得しています。

金メダル（6個）
森本雅美（陸上 女子スラローム 4）
中村正則（陸上 男子スラローム 4）
小川則之（陸上 男子スラローム 3）
小野寺章彦（陸上 男子スラローム 1B）
塩田桐子（陸上 女子スラローム 3）
菅野和枝（陸上 女子スラローム 5）

銀メダル（5個）
鈴木一二美（アーチェリー 女子ダブルス B2）
松尾元春（陸上 男子スラローム 2）
森田俊子（陸上 女子スラローム 5）
桜井徹男（陸上 男子スラローム 1C）
吉田佳代（陸上 女子スラローム 4）

銅メダル（2個）
中橋一彰（陸上 男子スラローム 5）
日本チーム（車椅子バスケットボール 女子）

合計すると、日本選手団はニューヨーク会場で11個、ストーク・マンデヴィル会場で13個、合わせて金メダル9個、銀メダル7個、銅メダル8個の計24個のメダルを獲得する活躍を見せました。

まとめ

1984年のパラリンピックは、当初の計画が変更され、結果として異例の分離開催という形となりました。この困難な状況にもかかわらず、世界各国の選手たちが集い、熱戦を繰り広げました。特に日本人選手は、両会場で数多くのメダルを獲得し、その存在感を示しました。この大会は、財政問題や開催地の調整といった課題に直面しながらも、関係者の尽力によって開催が実現し、パラリンピックの歴史において記憶されるべき一章を飾るものとなりました。同年にはロサンゼルスオリンピックも開催されており、スポーツ界全体にとって記念すべき年となりました。

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