1985年モナコグランプリ

1985年モナコグランプリ：栄光と波乱のモナコ

1985年のF1世界選手権第4戦、モナコグランプリは、1985年5月19日、伝統のモンテカルロ市街地コースにて開催されました。このレースは、劇的な展開と、チーム事情を反映した波乱に満ちた一戦となりました。

チーム事情の変遷：スピリットの撤退とトールマンの参戦

レース開始前、F1界に大きな変化が訪れました。スピリット・ホンダが突如として選手権からの撤退を表明したのです。一方、タイヤ供給契約の問題で開幕戦を欠場していたトールマン・ハートは、スピリットからピレリタイヤの供給を受けることで、モナコグランプリから念願のシーズン初参戦を果たすこととなります。この撤退と参戦劇は、レースの結果以上に大きな話題となりました。

予選：セナのポールポジションと物議を醸した行動

予選では、アイルトン・セナが圧倒的な速さを見せつけました。木曜日の最初のセッションからトップタイムを記録し、土曜日の最終予選でもその座を譲らず、ポールポジションを獲得しました。しかし、セナは予選用タイヤだけでなく、レース用タイヤでもコースを周回し、他のドライバーのタイムアタックを妨害するような行動に出ました。この行為に、ミケーレ・アルボレートやニキ・ラウダら多くのドライバーが激怒。セナの行為は、スポーツマンシップに反するとして大きな議論を呼びました。セナの後には、ナイジェル・マンセル、アルボレートが続きました。モナコグランプリはコース全長が短いため、決勝は20台という少ない台数で行われました。そして、シーズン初参戦のトールマンのテオ・ファビは、最後のグリッドからレースに挑むことになりました。

決勝：プロストの勝利と、セナ、アルボレートの苦闘

決勝レースは、序盤からセナとアルボレートによる激しいトップ争いで幕を開けました。しかし、セナは早々にマシントラブルに見舞われ、リタイアを余儀なくされます。トップに立ったアルボレートでしたが、アラン・プロストの猛追を受け、さらにピケとパトレーゼのクラッシュを避けようとした際にコースアウト。コースに復帰したものの、プロストに抜かれ、タイヤ交換のためにピットイン。順位を4位まで落としました。アルボレートは必死に追い上げ、2位まで順位を回復させますが、プロストを捉えることはできませんでした。

プロストはアルボレートのピットイン後、トップに立ち、以後一度も首位を譲ることなく、見事な走りでチェッカーフラッグを受けました。モナコグランプリでの優勝は、プロストにとってシーズン2勝目となりました。このレースは、セナの予選での圧倒的な速さ、そして決勝での彼の不運、アルボレートの粘り強い走り、そしてプロストの安定した走りなど、様々なドラマが凝縮された、記憶に残る一戦となりました。 セナの予選での行動は物議を醸しましたが、レースそのものは、F1の技術力とドライバーのスキル、そしてドラマ性を余すことなく見せてくれる、まさにモナコグランプリらしい、興奮に満ちたものでした。 スピリットチームの撤退とトールマンチームの初参戦という、チーム事情の変化も、このレースをさらに記憶に残るものにしたと言えるでしょう。

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