1986年のロードレース世界選手権

1986年FIMロードレース世界選手権：ローソンの時代到来と新たなスターの誕生

1986年のロードレース世界選手権は、前年度王者フレディ・スペンサー（ホンダ）の活躍が期待される中、幕を開けました。しかし、開幕戦からのスペンサーの活躍は長くは続きませんでした。開幕戦で腕の負傷を負い、その後も手根管症候群に苦しむことになり、思うようにレースをこなせないシーズンとなりました。スペンサーの不運は、このシーズンの展開を大きく変えることになります。

スペンサー不在の状況の中、台頭してきたのはヤマハのエディ・ローソンでした。オランダGPでのリタイアを除き、全レースで表彰台を獲得し、7勝という圧倒的な成績でチャンピオンに輝きました。ローソンの強さは、スペンサー不在のシーズンを制圧しただけでなく、新たな時代の到来を印象付けるものとなりました。

スペンサーの欠場により、ホンダのエースの座を射止めたのは、オーストラリア人ライダーのワイン・ガードナーでした。WGP初優勝を含む3勝を挙げ、大きな飛躍を遂げたシーズンとなりました。スペンサー不在のホンダ陣営において、ガードナーの活躍は、チームにとって大きな力となりました。また、新たにチーム・ラッキーストライク・ロバーツ・ヤマハを結成したケニー・ロバーツが参戦。チームメイトのランディ・マモラは、シーズンを通して安定した成績を残し、ランキング3位に食い込みました。

250ccクラスでは、ベネズエラのカルロス・ラバードがヤマハで活躍し、6勝を挙げて2度目のチャンピオンを獲得しました。幾度かのリタイアを喫しながらも、その圧倒的な速さでライバルたちを寄せ付けませんでした。一方、日本人ライダーの平忠彦は、このシーズンでWGPにフル参戦。怪我に苦しむシーズンとなりましたが、最終戦サンマリノGPで初優勝を果たすという快挙を達成しました。これは、日本のモータースポーツ界にとって大きな喜びとなりました。

125ccクラスでは、ガレリのファウスト・グレシーニとルカ・カダローラが激しいタイトル争いを展開しました。両ライダーとも4勝ずつを挙げ、最後までどちらがチャンピオンになるか分からない接戦となりました。最終的に僅差でカダローラがチャンピオンに輝きました。チームメイト同士による接戦は、観客を魅了し、記憶に残るシーズンとなりました。

80ccクラスでは、スペインのホルジェ・マルチネスがステファン・ドルフリンガーの連覇を4で止め、チャンピオンに輝きました。一方、このシーズン限りでの引退を発表したアンヘル・ニエトの功績は称えられました。引退時点で90勝という偉大な記録は、当時のアゴスチーニに次ぐ歴代2位（当時）であり、その功績は後世に語り継がれることでしょう。

シーズン終了後には、ドイツのホッケンハイムリンクで80ccクラスと125ccクラスのイベントが開催され、バーデン＝ヴュルテンベルクGPとしてそれぞれのクラスのチャンピオンシップの一戦に加えられました。この追加レースは、シーズン全体の盛り上がりを高める一助となりました。

1986年シーズンは、スペンサーの負傷という不運な出来事から始まりましたが、ローソンの圧倒的な勝利、ガードナーやマモラなどの台頭、そして平忠彦の初優勝など、多くのドラマを生み出した、記憶に残るシーズンとなりました。それぞれのクラスで活躍したライダーたちは、この年の世界選手権を彩る、多くのスター選手たちでした。

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