1986年イギリスグランプリ

1986年のF1世界選手権第9戦、イギリスグランプリは、7月13日、ブランズハッチ・サーキットで開催されました。このレースは、2016年シーズン終了時点において、ブランズハッチで開催された最後のF1レースという歴史的意義を持っています。

決勝レースは、スタート直後から悲劇的な幕開けとなりました。1コーナー、パドックベンドで多重クラッシュが発生。この事故に巻き込まれたジャック・ラフィット選手は、コース内側のガードレールに激しく衝突し、両足を複雑骨折する重傷を負いました。この事故が、ラフィット選手のF1キャリアに終止符を打つこととなりました。

なお、このレースはラフィット選手にとってF1通算176戦目の出場であり、この記録は当時、グラハム・ヒル選手が保持していた最多出走記録に並ぶものでした。

激しいクラッシュによりレースは中断、そして再スタートという異例の展開に。1周も消化しないまま発生した事故だったため、完全に新しいレースとして再スタートが行われました。この決定は、スタート直後にドライブシャフトを破損していたイギリス人ドライバー、ナイジェル・マンセル選手にとって、レースに復帰できる絶好の機会となりました。

再スタート後、ネルソン・ピケ選手がトップに立ち、マンセル選手が追いかける展開に。激しいトップ争いが展開される中、23周目、ピケ選手がミスを犯した隙を突いてマンセル選手がトップに躍り出ます。その後、タイヤ交換を済ませてもマンセル選手はピケ選手を振り切り、そのままトップをキープ。見事、チェッカーフラッグを受けました。

この勝利は、マンセル選手にとって前年ヨーロッパGPでの優勝に続く、ブランズハッチでの2連勝となりました。イギリス人ドライバーとして、そして母国での勝利ということもあり、この快挙は大きな喜びをもたらしたことは言うまでもありません。一方、痛ましい事故によってF1の舞台から去ることになったラフィット選手。彼の長年の功績と、突然の引退は、多くのF1ファンに深い衝撃と悲しみを与えました。

1986年イギリスGPは、勝利の歓喜と、惜別の思いが入り混じった、記憶に残るレースとして、F1の歴史に刻まれています。スタート直後の大クラッシュ、そして再スタートというドラマチックな展開、イギリス人ドライバーの活躍、そしてベテランドライバーの引退劇。数々の要素が絡み合い、このレースをF1史における特筆すべき一戦としたのです。数々のアクシデントと、それを乗り越えたマンセルの勝利、そして一人のドライバーのF1キャリアの幕切れ。1986年イギリスGPは、F1史に刻まれた忘れられない一戦となりました。

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