1986年ハンガリーグランプリ

1986年ハンガリーグランプリ：東欧初開催とピケ、セナの死闘

1986年8月10日、ハンガリーのハンガロリンクにおいて、F1世界選手権第11戦、ハンガリーグランプリが開催されました。これは、東側諸国で初めて開催されたF1レースという歴史的意義を持つイベントでした。 このレースは、ネルソン・ピケとアイルトン・セナによる手に汗握るバトルが展開され、大きな話題を呼びました。

新コースと予選

F1レース開催のために新設されたハンガロリンクは、多くのドライバーにとって未知のコースでした。そのため、木曜日には2時間のフリー走行が設けられ、ドライバーたちはコースの特性を掴むための時間を費やしました。予選では、アイルトン・セナがポールポジションを獲得しましたが、彼のマシンは最新のEF15Cエンジンではなく、標準仕様のEF15Bエンジンを搭載していました。

決勝レース：ドラマチックな展開

決勝レース当日、ウォームアップではアラン・プロストとケケ・ロズベルグの2台のマクラーレンがトップタイムを記録しましたが、プロストのマシンはレース前にトラブルに見舞われ、スペアカーへの乗り換えを余儀なくされました。さらに、セナもウォームアップでEF15Cエンジンのトラブルに見舞われ、予選と同じEF15Bエンジンでレースに臨むこととなりました。EF15Cエンジンは、セナとルネ・アルヌーのみに供給されていましたが、アルヌーもウォームアップでエンジントラブルに見舞われ、EF15Bエンジンでのレース参戦を余儀なくされました。

レース序盤は、セナがリードを奪いました。しかし、ピケは序盤でナイジェル・マンセルを抜き、セナを追撃。12周目にはピケがセナをオーバーテイクし、トップに躍り出ました。その後、ピケがタイヤ交換を行うと、2位につけていたセナはペースを上げ、ピケとの差を縮めていきました。セナがタイヤ交換を終えると、トップに返り咲きました。

ピケの劇的な追い抜き

ピケはセナを執拗に追いかけ続けました。55周目、第1コーナーでピケはセナのイン側から抜きにかかりましたが、コーナーでマシンがはらみ、セナに逆転を許しました。しかし、57周目、再び第1コーナーでピケは今度はアウト側から果敢にアタック。セナの鼻先を押し込むようにドリフトしながら、カウンターステアを当ててコーナーをクリアしました。この見事なオーバーテイクでセナを抜き去ったピケは、その後リードを広げ、見事勝利を掴みました。当初78周の予定でしたが、レース時間が2時間を超えたため、76周でレースは終了しました。

ザクスピードのスポンサー対応

興味深いのは、スポンサーの対応です。「West」をスポンサーに持つザクスピードは、東側諸国初開催のこのレースに際し、ジョナサン・パーマーのマシンにはスポンサーロゴを「East」に変更して参戦しました。一方、ヒューブ・ロテンガッターのマシンは「West」のままだったとのことです。

まとめ

1986年ハンガリーグランプリは、東側諸国初のF1レースとして歴史に刻まれ、ピケとセナによる激しいバトル、そしてコース、マシン、スポンサーの様々な要素が絡み合った、記憶に残るレースとなりました。新コース、エンジントラブル、そしてドライバーたちの戦略と技量、すべてが奇跡的なレース展開を演出したと言えるでしょう。

もう一度検索