ザクスピード

ザクスピード：チューニングからF1挑戦、そしてモータースポーツ界への貢献

1968年、ドイツの小さな田舎町ニーダーツィッセンで、エリッヒ・ザコウスキーによって設立されたザクスピード(Zakspeed)。ニュルブルクリンクの近隣という立地を活かし、世界に名を轟かせるレーシングチームへと成長を遂げました。

エンジンチューニングとドイツレーシングカー選手権での活躍 (1973年-1981年)

ザコウスキーの専門はエンジン開発とチューニング。フォード・エスコートとカプリのエンジンチューニングで高い評価を得て、ドイツのみならず海外でもその名を知られるようになりました。70年代後半には、ドイツレーシングカー選手権(DRM)でフォードのワークスチームとして活躍。DRMは後のDTM(ドイツツーリングカー選手権)の前身にあたる重要な選手権でした。FIA主催のグループ2(フォード・エスコート)とグループ5(フォード・カプリ)に参戦し数々の勝利を収め、1981年にはドライバーのクラウス・ルートヴィッヒが年間チャンピオンを獲得する快挙を達成しました。IMSAシリーズへの参戦も果たし、アメリカ市場にも進出しました。このIMSA参戦では、グループ5のカプリをベースとしたフォード・マスタングをチューニングしました。

世界耐久選手権への挑戦とドイツ・インターシリーズ制覇 (1982年-1984年)

1982年からは世界耐久選手権に参戦。フォード・カプリをベースにした1.4Lターボエンジンを搭載したマシンは、排気量アップを経てフォード・C100に搭載され、クラウス・ルートヴィッヒ、マンフレッド・ヴィンケルホック、マルク・スレールといった名ドライバーがステアリングを握りました。しかし、上位争いには届かず、最高位は1982年のブランズハッチ1000km耐久レースでの4位でした。その後、フォード・ドイツからのサポートが打ち切られましたが、ザクスピードは独自開発を続け、改良型マシンC1/4、C1/8でドイツ・インターシリーズに参戦。1984年にはクラウス・ニェドヴェッチがチャンピオンを獲得しました。

無謀とも称されたF1への挑戦 (1985年-1989年)

1983年、ザクスピードはF1参戦計画を発表。耐久レースでのカーボンファイバー技術やツーリングカーでの豊富な経験から、F1参戦に必要な技術力があると確信していました。しかし、多くのメディアからは無謀な挑戦として受け止められました。1985年から参戦を開始したザクスピードは、自社設計の直4ターボエンジンを搭載したザクスピード・841を投入。当初はシルバーの車体でしたが、たばこメーカー「ウエスト」のスポンサーを得て、赤と白のカラーリングとなりました。初年度は1台体制でジョナサン・パーマーを起用しましたが、完走はモナコGPでの11位のみ。その後も苦戦が続き、1987年のサンマリノGPでマーティン・ブランドルが5位入賞を果たしたものの、唯一の入賞に終わりました。1989年、ターボエンジンが禁止されたことに伴い、ヤマハ製の自然吸気エンジンを搭載しましたが、信頼性とパワー不足に悩まされ、思うような成績を残せませんでした。最終的に、1989年シーズン終了後にF1から撤退することとなりました。ザクスピードは、シャシーとエンジンを自社で製作した数少ないチームのひとつでありました。

F1撤退後とその後 (1990年代以降)

F1撤退後、ザクスピードはDTMや国際ツーリングカー選手権に参戦。ペーター・ザコウスキーがチームを率い、ニュルブルクリンク24時間レースで幾度も優勝を収めました。FIA-GT選手権、V8STAR選手権にも参戦し、成功を収めています。2000年代にはニュルブルクリンク・レーシングスクールを運営する一方、財政難により会社更生法の適用を申請するなど、苦境を乗り越えながら活動を続けています。現在も、モータースポーツ界で活動を継続しており、トヨタ・チーム・タイランドのサポートなどを行っています。

ザクスピードは、エンジンチューニングから始まり、F1への挑戦、そして様々なカテゴリーでの活躍を通じて、モータースポーツ界に大きな足跡を残しました。その挑戦と技術力は、今もなお多くの人の記憶に刻まれています。

もう一度検索