1986年メキシコグランプリ

1986年10月12日、メキシコシティのエルマノス・ロドリゲス・サーキットで、F1世界選手権第15戦メキシコグランプリが開催されました。このレースは、1970年以来16年ぶりのメキシコGPということもあり、大きな注目を集めました。

予選では、ゲルハルト・ベルガーが初日トップタイムを記録し、暫定ポールポジションを獲得。ベルギーGP以来、シーズン2度目の快挙でした。しかし、予選2日目にはタイムを更新したものの、最終的には4番手に順位を落としました。ポールポジションを掴んだのはアイルトン・セナ。ウィリアムズのネルソン・ピケとナイジェル・マンセルが、それぞれ2位と3位につけて予選は幕を閉じました。

決勝レースは、予想外の展開となりました。スタートでマンセルが大きく順位を落とすアクシデントが発生。一方、上位勢の中で唯一ピレリタイヤを履いていたベルガーは、大胆にもタイヤ交換無しの戦略を採りました。レース序盤は4位を走行していましたが、ピケ、セナ、アラン・プロストといったトップランナーたちがタイヤ交換のためにピットインすると、ベルガーはトップに躍り出ました。そして、そのリードを守り抜き、見事チェッカーフラッグを受けました。

この勝利は、ベルガー自身にとってF1初優勝というだけでなく、ベネトンチーム（前身のトールマン時代を含む）にとっても初の優勝という、歴史的な瞬間となりました。2位には、タイヤ交換を1回のみとしたプロスト、3位にはセナが入賞。ウィリアムズのピケとマンセルはそれぞれ4位と5位に終わりました。この結果、プロストは最終戦を前にランキングトップのマンセルとのポイント差を6点に縮め、チャンピオン争いに望みをつなぎました。

メキシコGPは、タイヤ戦略が勝敗を大きく左右したレースでした。ベルガーのタイヤ交換無しの戦略は、大きなリスクを伴うものだったと言えるでしょう。しかし、その大胆な決断と、優れたドライビングスキルが、奇跡的な勝利をもたらしました。また、セナ、ピケ、プロスト、マンセルといった、当時のF1を代表する名ドライバーたちの競演も、このレースを記憶に残るものにしました。

16年ぶりの開催ということもあり、メキシコGPは、多くのF1ファンにとって忘れられないレースとなりました。ベルガーの初優勝、そしてプロストのチャンピオン争いへの望み。様々なドラマが凝縮された、1986年シーズンを象徴する一戦だったと言えるでしょう。レースの結果は、公式サイトやAUTOCOURSE 1986-1987などの資料で確認できます。

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