1987年7月23日首都圏大停電

1987年7月23日首都圏大停電

1987年7月23日午後、日本の首都圏を襲った大規模停電は、東京都、埼玉県、神奈川県など6都県の約280万戸に影響を及ぼしました。この停電は、猛暑による電力需要の急増と、それに伴う無効電力供給の不足が複合的に絡み合って発生しました。

概要

猛暑により電力需要が急増する中、無効電力もまた急速に増加しました。電力会社は変電所に設置された電力用コンデンサを次々と投入しましたが、無効電力の増加に追いつかず、基幹系統の変電所の母線電圧が低下しました。その結果、不足電圧リレー(UVR)が作動し、午後1時19分頃には基幹変電所が停電、連鎖的に配下の変電所も停電しました。また、発電機の負荷が急減したことで回転速度が増加し、商用電源の周波数が上昇、発電機が脱落するという事態も発生しました。

停電地域は、東京都区内北部・南部、埼玉県南部、神奈川県西部、静岡県東部、山梨県南部、千葉県北部に及び、東京23区内では午後1時36分に復旧しましたが、関東全域での完全復旧は午後4時40分となりました。この間、鉄道網の運休や信号機の停止、エレベーターの閉じ込めなど、人々の生活に大きな影響が出ました。特に国会議事堂のある千代田区永田町でも停電が発生し、予算委員会が開催できなくなるという事態も起きました。

原因

この停電の主な原因は、無効電力の急増に対して電力用コンデンサの投入で対応しようとしたものの、その供給が追いつかず、電力系統全体の電圧を維持できなくなったことにあります。インバータエアコンの普及も一因として指摘されており、電圧低下時にも冷房機能を維持しようとする制御が、更なる電圧低下を招き、悪循環を生み出したと言われています。

通常の停電と異なり、短絡や地絡などの電気事故が直接的な原因ではなく、電力系統における重負荷時の無効電力発生予測の誤りと、それに対応するための電力用コンデンサー増設の遅れが根本的な原因でした。この事故は、電力系統の安定運用における無効電力管理の重要性を浮き彫りにしました。

再発防止策

この大規模停電の教訓から、以下のような再発防止策が講じられるようになりました。

負荷急増に対応可能な電源の確保: 揚水発電所などの電源を整備し、電力需要の急な変動に対応できる体制を構築。
無効電力急増対策: 同期調相機(RC)や静止形無効電力補償装置(SVC)を設置し、無効電力の変動を抑制。
電力用コンデンサの増設: 電力系統の安定化を図るために、電力用コンデンサの増設を推進。
電圧高め運用: 基幹系統の電圧を公称電圧よりも高く運用し、電圧変動に対する余裕度を確保。
オンライン需要予測: 電力需要をオンラインで計測し、リアルタイムに需要予測計算を行い、発電機の制御や変圧器のタップ制御を最適化。

この首都圏大停電は、電力供給の安定性が社会インフラの根幹をなすことを改めて認識させ、その後の電力系統の運用・管理体制の強化に繋がる重要な出来事となりました。

関連項目

停電
停電の一覧
2006年8月14日首都圏停電
電圧崩壊
P-V曲線

外部リンク

東京電力 ホームページ
過去の大規模停電事例 (PDF) 一般社団法人 電気学会

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