1989年の広島東洋カープ

この年は、チームにとって大きな転換期となったシーズンです。長年「赤ヘルの四番」として活躍し、前年限りで勇退した阿南準郎監督の後を受け、山本浩二氏が新監督に就任しました。コーチ陣には、現役時代の同僚だった大下剛史氏をヘッドコーチ、池谷公二郎氏を投手コーチ、水谷実雄氏を打撃コーチとして招聘し、新たな体制でシーズンに臨みました。

チームのイメージも刷新されました。1973年から続いていたプルオーバー型のユニフォームを廃止し、ボタン式のスタイルに変更。デザインはメジャーリーグのシンシナティ・レッズを参考にし、袖のラインから紺色が取り除かれ、帽子の「C」マークも白色一色になるなど、外観から大きな変更が行われました。

シーズン概況

山本浩二新体制でスタートしたチームは、シーズン序盤の5月には読売ジャイアンツと熾烈な首位争いを展開し、好調な滑り出しを見せました。しかし、夏場を迎える頃からジャイアンツにゲーム差をつけられ始め、終盤には失速。最終的には4年ぶりとなるセ・リーグ2位でシーズンを終えることになりました。

投手陣

投手陣は、北別府学、大野豊、川口和久という不動の先発三本柱がチームを支え、クローザーには「炎のストッパー」こと津田恒実が控えるなど、非常に安定した構成でした。個人タイトルでは、川口和久投手が183奪三振で最多奪三振のタイトルを獲得。また、津田恒実投手は28セーブを挙げ、最優秀救援投手に輝く活躍を見せました。

打撃陣

打線には、新たな助っ人外国人としてウェイド・ロードン選手とロッド・アレン選手が加わり、攻撃陣の強化が図られました。ロードン選手は打率.300、22本塁打と期待に応える成績を残しました。一方、アレン選手はシーズン前半は本塁打が出ないなど苦戦しましたが、夏場以降に調子を上げ11本塁打を記録し、翌年への期待を持たせました。

外国人選手だけでなく、日本人選手も躍動しました。俊足の正田耕三選手は50盗塁を記録し、盗塁王のタイトルを獲得。また、ルーキーの野村謙二郎選手は、長年チームを牽引した高橋慶彦選手の控えながらも一軍に定着し、今後の中心選手となる片鱗を見せました。

出来事

1989年シーズン中には、多くの選手が節目の記録を達成しました。

5月31日には、北別府学投手が通算2500投球回を達成。
6月4日には、高橋慶彦選手、正田耕三選手、ロードン選手がプロ野球史上初となる先頭打者からの3者連続本塁打を記録しました。
6月6日には、高橋慶彦選手が通算456盗塁を記録し、当時の歴代単独5位となりました。
6月7日には、川口和久投手が通算1000奪三振を達成。これは球団OBの江夏豊氏に次ぐ速さでの達成でした。
高橋慶彦選手は7月18日に通算150本塁打、8月8日には通算1500試合出場も達成しました。
9月には、山崎隆造選手（9月17日）、達川光男選手（9月24日）、長嶋清幸選手（9月30日）がそれぞれ通算1000試合出場を達成。
* 9月27日には、エースの大野豊投手が通算100勝を達成しました。

シーズン後

シーズン終了後、チームのリードオフマンとして長年活躍した高橋慶彦選手がロッテオリオンズへトレードで移籍。これはチームにとって一つの時代の終わりを告げ、山本浩二体制下での本格的なチーム改革へと繋がる大きな出来事となりました。

この1989年シーズンは、新監督のもとユニフォームも一新し、多くの若手が台頭する一方で、長年の功労者がチームを去るなど、まさにチームの過渡期を象徴する一年となりました。

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