1990年の日本

1990年の日本：バブル景気と社会変容の年

1990年（平成2年、干支は庚午）は、日本にとって激動の時代、バブル景気最後の輝きと、その崩壊への足音を感じさせた年でした。高度経済成長の遺産と、新たなテクノロジー、そして国際的な情勢変化が複雑に絡み合い、日本の社会構造や国民生活に大きな影響を与えました。この項目では、政治、経済、社会、文化、スポーツなど、多角的な視点から1990年の日本を振り返ります。

政治

この年は、海部俊樹内閣が政権を担っていました。1月には衆議院が解散され、2月に行われた第39回衆議院議員総選挙では、自由民主党が圧勝し、安定多数を確保しました。しかし、バブル経済の崩壊を予感させる経済指標の悪化や、政治改革への要請の高まりなど、政治の課題も顕在化していました。

内閣の動きとしては、2月28日に森山眞弓内閣官房長官の後任に坂本三十次氏が就任したことが挙げられます。また、最高裁判所長官も矢口洪一氏から草場良八氏へと交代しています。国会は、第117回常会から第120回常会まで開催され、様々な法案が審議されました。

経済

1990年は、バブル景気のピーク、そしてその終焉への転換点でした。地価や株価は依然として高水準を維持していましたが、すでに過熱感が懸念され始め、その後の急激な崩壊への兆候も見えていました。

企業活動では、任天堂から家庭用ゲーム機「スーパーファミコン」が発売され、大きなヒットを記録しました。また、麒麟麦酒から発売された「キリン一番搾り生ビール」もロングセラー商品となりました。一方で、この年の日経平均株価は、2月後半から急激な下落を示し始めました。これは、翌年のバブル崩壊への序章となる出来事でした。

社会

バブル景気の影響は、社会全体に広がりを見せていました。チノパンやPコートなどのファッションが流行し、若者を中心に消費が活況を呈していました。一方で、社会問題も顕在化しました。1月には、人気アニメ『ちびまる子ちゃん』の放送が始まり、国民的な人気を博しましたが、一方、勝新太郎氏の薬物事件など、社会の暗い側面も見られました。

この年、新語・流行語大賞の新語部門では「ファジィ」、流行語部門では「ちびまる子ちゃん」がそれぞれ金賞を受賞しました。これは、当時の社会風潮を反映したものといえるでしょう。

文化

音楽シーンでは、B'z、米米CLUB、TM NETWORK|TM_NETWORKなどのアーティストがヒット曲を連発し、音楽チャートを賑わせました。映画では、黒澤明監督が米アカデミー賞特別名誉賞を受賞するなど、日本の映画界も国際的に高い評価を得ていました。アニメーションも、ちびまる子ちゃんの大ヒットや、スーパーマリオくんの連載開始など、充実した1年でした。

文学では、芥川賞に辻原登氏、小川洋子氏、直木賞に泡坂妻夫氏、古川薫氏がそれぞれ受賞しました。また、二谷友里恵氏のエッセイ『愛される理由』はベストセラーとなりました。

スポーツ

プロ野球では、セ・リーグを巨人が、パ・リーグを西武が制覇し、日本シリーズは西武が4連勝で優勝しました。大相撲では、千代の富士、北勝海、旭富士が優勝争いを展開しました。

国際情勢

1990年は、世界的に大きな変化が起きた年でした。東ドイツと西ドイツが統一され、冷戦構造が崩壊へ向かう動きが加速しました。ソビエト連邦では、バルト三国などの独立運動が活発化し、後にソ連の崩壊につながる動きが始まりました。

まとめ

1990年の日本は、バブル景気の絶頂期と崩壊への序章、社会の活気と社会問題の複雑な絡み合い、そして国際的な情勢変化など、様々な要素が混在した年でした。この年は、近年の日本の発展と変化を象徴する年として、歴史に刻まれています。

もう一度検索