1991年の国際連合事務総長の選出

国連事務総長の選出とブトロス・ブトロス＝ガーリの歴史的役割

1991年に行われた国際連合事務総長の選挙は、前任者のハビエル・ペレス・デ・クエヤルの2期目が満了するのを受けて、新しい事務総長を決める重要なものでした。この選挙において、エジプトのブトロス・ブトロス＝ガーリが選出され、彼はアフリカ出身者として初めてこの役割を担うことになりました。その際には、冷戦の終わりを迎えた新世界秩序への期待が高まっており、その期待に応えるかのように、選出プロセスは過去数十年で最も円滑に進行しました。

選出過程の歴史を遡ると、1991年以前の事務総長にはアフリカ出身者が存在しなかったため、ブトロス＝ガーリの誕生は大きな意味を持ちました。特に、1971年と1981年の選出では、常任理事国間の拒否権の行使によって膠着状態が続いていました。1981年には事前投票が導入され、候補者への支持を測る手段が生まれましたが、その過程でも争いは続いていました。1981年の選出では、最も得票数を挙げたタンザニアのサリムがアメリカの拒否権によって阻止され、結局ハビエル・ペレス・デ・クエヤルが選ばれることになります。

1991年、ペレス・デ・クエヤルの2期目が終わる前に、アフリカからの事務総長候補者を支持する動きが高まりました。アフリカ統一機構は、アフリカ出身者以外の候補者に圧力をかけることを公約し、非同盟運動もアフリカからの候補者を応援しました。中国も再度アフリカ出身者を支持しており、その結果、アフリカの候補者に対する支持が固まりました。しかし、当時の安保理における常任理事国の中には、地域グループ持ち回りの原則に反対する国も存在しました。

選挙期間中、事前投票が6週間にわたって行われ、最初の投票は10月10日、最終的には11月21日の結果に基づき、ブトロス＝ガーリが選出されました。特に、初めて採用された事前投票システムは、事務総長選出の新しい方法論となり、その後の選出でも重要な役割を果たすことになります。ブトロス＝ガーリは、複数の選挙でリードを保ち、最終的に安保理によって国連総会に推薦されることとなりました。総会は満場一致で彼を次期事務総長に任命しました。

ブトロス＝ガーリの選出は、冷戦後の新たな国際情勢を反映したものであり、アフリカ地域への注目と期待を高める契機となりました。彼の任期は1996年まで続くことになり、この期間中に国連の平和維持活動など多くの重要な課題に取り組みました。1996年には再選を目指しましたが、アメリカの拒否権により再任が果たせず、彼は事務総長から退くことになりました。

このように、1991年の国連事務総長選出は、国際的なパワーバランスの変化とアフリカの地位向上を象徴する歴史的な出来事であり、ブトロス＝ガーリの選出はその中で重要な意味を持ち続けています。

もう一度検索