1996年モナコグランプリ

1996年モナコグランプリ：波乱の展開と意外な結末

1996年F1世界選手権第6戦、モナコグランプリは、1996年5月19日、モンテカルロ市街地コースにて開催されました。このレースは、予選から決勝まで、数々のアクシデントと予想外の展開が連続した、F1史に残る波乱のレースとして知られています。

予選：シューマッハのポールポジション獲得

予選では、デイモン・ヒルが暫定トップタイムを記録し、ポールポジション獲得が確実視されていました。しかし、セッション終盤、ミハエル・シューマッハが最終セクターでタイムを大幅に縮め、ヒルを0.5秒上回り、ポールポジションを奪取しました。これはサンマリノGPに続く2戦連続のポールポジション獲得であり、シューマッハのモナコ3連覇への期待が高まりました。ベネトンのアレジとベルガーが2列目、一方、ヒルのチームメイトであるヴィルヌーヴは10番手とやや出遅れる結果となりました。

決勝：序盤からのアクシデントとリタイアの嵐

決勝レース当日、午前中は激しい雨が降り、路面はウェットコンディションでした。多くのドライバーがレインタイヤを選択する中、フェルスタッペンのみがドライタイヤでスタートするというギャンブルに出ましたが、1コーナーでクラッシュ、リタイアを喫しました。

スタートでは、ヒルがシューマッハを抜きトップに立ちましたが、シューマッハはトンネル手前でスピンしクラッシュ、リタイア。この時点で、早くも波乱の展開が予想されました。オープニングラップでは、バリチェロのスピン、フィジケラとラミーの接触など、5台がリタイアするという衝撃的な展開となりました。その後も、片山右京、ロセットがクラッシュ、ベルガーはギアボックストラブルによりリタイアするなど、次々とアクシデントが発生しました。

レース中盤では、アーバインの後方に多くのマシンが集中し、ペースが遅くなっていました。フレンツェンはアーバインと接触し、ノーズを破損、最後尾に後退しました。路面が完全にドライになると、各車はピットインしてドライタイヤに交換しました。

予選14番手だったパニスは、燃料を多く積んでスタートし、短いピットストップ戦略をとることで順位を上げました。パニスはファステストラップを連発し、アーバインのインを突いて3位に浮上しました。アーバインは接触の影響でバリアに衝突、シートベルトを緩めてしまい、ピット作業で時間をロスしました。

トップを走るヒルは、アレジに20秒以上の差をつけて快調に走行していましたが、41周目にエンジンブローによりリタイア。モナコ制覇のチャンスを逃しました。

トップに立ったアレジは、パニスに30秒以上の差をつけていましたが、サスペンショントラブルによりピットイン、リタイアしました。これによりパニスがトップに立ちました。

終盤でもアクシデントは続き、ヴィルヌーヴとバドエルの接触、サロとハッキネンを含む玉突き事故が発生。コース上には、パニス、クルサード、ハーバート、フレンツェン、サロ、ハッキネン、アーバインの7台のみが残りました。

レースは、トップを走るマシンの相次ぐリタイアと序盤のウェット路面により、全体のペースが遅くなり、2時間ルールが適用され75周で終了となりました。優勝はパニス、2位クルサード、3位ハーバート。完走はわずか3台という異例のレース結果となりました。

結果とその後

パニスの優勝は、彼とエンジンサプライヤーの無限、そしてリジェチームにとって初優勝となりました。リジェチームにとっては1981年以来15年ぶりの優勝であり、フランス人ドライバー、フランスチームによるモナコGP制覇という快挙となりました。しかし、これがパニスとリジェチームにとって最後の優勝となり、このレースはF1の歴史に刻まれる、記憶に残る一戦となりました。

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