ファステストラップ

ファステストラップ（Fastest Lap, FL）とは

ファステストラップは、モータースポーツのレースにおいて、最も速い一周タイムを記録したドライバーとそのタイムのことを指します。特にフォーミュラ1（F1）のレースで顕著に見られるこの制度は、コース全体のスピードを測るための重要な指標となっています。

概要

ファステストラップは、通常のサーキットにおけるコースレコードとして採用されることが多いですが、これは予選のポールポジションタイムとは異なります。これは、F1の歴史的なレギュレーションに起因しています。以前は、予選用に特別に設計されたエンジンやタイヤ、さらには燃料が使用され、予選タイムがレースにおいての真のスピードを反映していないためです。

1994年から2009年にかけては、予選中にレース用の燃料を積んだまま走行するため、実際のレースにおける速度と予選のタイムを直接比較することが困難でした。したがって、ファステストラップが重要視されるようになったのです。

F1では、1950年から1959年までの期間、最速を記録したドライバーには1ポイントが与えられていました。もしファステストラップ記録者が複数いた場合、そのポイントは等分されました。具体的には、1954年のイギリスグランプリでは、記録者が7名いたため、各ドライバーには0.143ポイントが付与されたのです。

2019年には、ファステストラップを記録したドライバーがレースの10位以内に入った場合に限り、彼らとそのチームに1ポイントが与えられるルールが導入されました。逆に、記録者が11位以下だったりリタイアしてしまった場合、ポイントにはならないとされていますが、そのファステストラップのタイムは公式に記録として残ります。

さらに、2007年からはシーズン中に最も多くのファステストラップを記録したドライバーにはDHLファステストラップアワードが授与されるシステムもあります。

F1におけるファステストラップの記録

2021年の時点で、歴史上最も多くファステストラップを獲得しているドライバーは、ミハエル・シューマッハとキミ・ライコネンで、いずれも年間10回の記録を持っています。また、日本人ドライバーでは中嶋悟が1989年オーストラリアグランプリ、小林可夢偉が2012年中国グランプリ、さらに角田裕毅が2023年アメリカグランプリでファステストラップを記録しました。

一方、長谷見昌弘が1976年F1世界選手権イン・ジャパンで記録したとされるファステストラップは、後に計測ミスであったことが判明しました。公式記録では、ジャック・ラフィットが70周目にドライタイヤで記録したタイムが正しいとされています。

デビュー戦でのファステストラップ

特に注目されるのが、いくつかのドライバーがデビュー戦でファステストラップを達成した事例です。ジュゼッペ・ファリーナ、ビル・ホーランド、ジャック・ヴィルヌーヴ、そしてニコ・ロズベルグなどがその例と言えます。

このように、ファステストラップはモータースポーツにおいて重要な役割を果たしており、記録の精度やプライドをかけたドライバーたちの戦いの象徴でもあります。モータースポーツのファンにとっても、その瞬間を目にすることは大きな興奮をもたらす要因の一つです。

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