1997年3月9日の日食

1997年3月9日の日食の詳細

1997年3月9日に発生した日食は、東アジアとアラスカの広範囲にわたって観測されました。主にモンゴルからシベリアの一部にかけて、長細い帯状のエリアで皆既日食が見られました。この日食の食分は1.042であり、最大の継続時間は2分50秒に達しました。

見られた地域と状況

皆既日食は、寒冷かつ人口がまばらな地域で観測されました。特に注目を集めたのは、ロシアのチタ市であり、人口38万人のこの都市が最も大きな観測ポイントとなりました。また、イルクーツクやウランバートルといった都市も、皆既帯からは少し外れていました。

冬の大陸中心部でのこの現象はならではの特徴がありました。最高の晴天率が期待できたため、多くの日食ツアーが日本から企画され、観測者たちは皆既日食の瞬間を捉えるために赴きました。しかし、そうした人々は、氷点下20～30℃という厳しい寒さと直面しました。撮影機材の耐寒性が求められる状況になっていたことから、機械式カメラを使用するグループが多く見られたのも、この日食の特徴的な側面でした。

観測の様子

シベリア南東部のチタ市では、日本からの観測ツアーの参加者約50人が、出発前から寒さに備えて準備を整えました。日の出前、空は曇りがちでしたが、日食開始直前の8時半頃に晴れ間が現れました。日食が始まると、近隣住民も興味を持ち、フィルムの切れ端を目に当てながら空を見上げました。

皆既日食が迫るにつれて、温度は急激に下がり、氷点下22℃にまで達しました。ついに、太陽が黒くなり、コロナがまばゆく輝きました。この時、水星や金星も見ることができましたが、期待されたヘール・ボップ彗星は見つけられませんでした。皆既日食のフィナーレを飾るダイヤモンドリングの瞬間には、周囲から歓声と拍手が上がり、一体感が生まれました。

モンゴルでは、多くの観測者が訪れましたが、雲が広がり、皆既日食を観ることができなかった地域もあったようです。

中国での観測

中国では、皆既帯が北西部と北東部の二つの地区に限定されていました。いずれも主要都市からは遠く離れた国境地域であり、特にアルタイ地区では日食の始まりとともに空の光度が変化していきました。

中国の漠河県では、皆既日食の持続時間がより長く、観光客の多くが観測に訪れました。この地域では、初めての皆既日食アマチュア無線通信実験と、テレビ生中継も行われました。

日本での日食

日本国内においては、部分日食が観測され、地点によって欠け方が異なりました。特に緯度が高い地域ほど、大きな食分が見られた傾向があります。各地の最大食分は、稚内で0.791、札幌で0.755などと報告されています。このように、1997年3月9日は、多くの場所で特別な天体現象が広がった記念すべき日となりました。

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