1998年長野パラリンピック

1998年 3月5日から14日にかけて、日本の長野県長野市を中心に、第7回冬季パラリンピックが開催されました。正式名称は「1998年長野パラリンピック」、またはシンプルに「長野1998」とも称されます。同年の長野オリンピック閉幕後に行われたこの大会は、冬季パラリンピックとしてはアジアで初めての開催という歴史的な意義を持つものでした。

大会の概要

この大会の大きな特徴の一つは、知的障害のある選手が初めて冬季パラリンピックの正式種目（ノルディック[スキー]]距離競技）に参加を認められた点です。これは障害者スポーツの多様性を広げる画期的な試みでした。しかしながら、次回のシドニー夏季パラリンピックにおいて、スペイン代表チームが知的障害クラスのバスケットボール競技に健常選手を偽装参加させ、金メダルを獲得するという不正事件が発覚しました。この問題は波紋を広げ、銀メダルのロシアチームにも同様の不正が認められたことなどを受け、[[国際パラリンピック委員会]は知的障害クラスの競技を一時的にパラリンピックから除外するという厳しい措置をとりました。長野大会での歴史的な一歩は、残念ながらこの不正によって後退を余儀なくされました。

また、聴覚障害や精神障害のある選手の参加についても、この時点ではまだパラリンピックの枠組みに含まれておらず、今後の課題として残されました。

大会の運営は、財団法人長野パラリンピック冬季競技大会組織委員会（通称：NAPOC）が担いました。華やかな開会式では、タレントの神田うのさんや和太鼓集団の鬼太鼓座などがパフォーマンスを披露し、大会の幕開けを飾りました。

実施競技と会場

長野パラリンピックでは、以下の競技が実施されました。

スキー
アルペンスキー
ノルディックスキー
バイアスロン
クロスカントリースキー
アイススレッジホッケー
* アイススレッジスピードレース

競技会場は、開・閉会式とアイススレッジスピードレースがエムウェーブ、アイススレッジホッケーがアクアウイングで行われました。バイアスロンはふれ愛の森公園（野沢温泉村）のバイアスロン会場、クロスカントリースキーは白馬村のスノーハープ、アルペンスキーは志賀高原で開催されました。

なお、アイススレッジスピードレースは、この長野大会を最後にパラリンピックの正式競技から除外されることとなりました。

日本選手の活躍

地元開催となった日本は、多くの選手がメダルを獲得し、活躍を見せました。特にアイススレッジスピードレースでは、土田和歌子選手や松江美季選手、武田豊選手などが複数の金メダルを含む多くのメダルを獲得しました。アルペンスキーの大日方邦子選手、バイアスロンの小林深雪選手（伴走・中村由紀選手）も金メダルに輝くなど、日本選手団は合計で金12個、銀16個、銅13個のメダルを獲得しました。

文化的な側面

長野パラリンピックでは、冬季パラリンピック史上初めて公式マスコットキャラクターが採用されました。その名も「パラビット」。1本のスキーに乗ったウサギをモチーフにした可愛らしいデザインでした。

大会のテーマ曲は、久石譲氏作曲・編曲、ドリアン助川氏作詞による「旅立ちの時〜Asian Dream Song〜」。宮沢和史氏 with 久石譲氏が歌唱しました。大会総合プロデューサーも務めた久石氏の楽曲は、閉会後、特に合唱曲として広く親しまれ、卒業式などで定番曲として歌い継がれています。

社会的な影響

長野パラリンピックは、日本におけるパラリンピックに対するメディアの意識を大きく変える転換点となりました。前大会のアトランタパラリンピックではメディア露出が限られていましたが、長野大会では積極的に報道が行われました。新聞では社会面だけでなくスポーツ面でも大きく取り上げられ、NHKでは閉会式が生中継されるなど、その注目度は飛躍的に高まりました。この大会以降、日本のメディアはパラリンピックをより積極的に取り上げるようになり、国民の認知度向上にも繋がりました。

また、同年の長野オリンピックに続き、日本選手団が着用する公式ユニフォームのデザインが、オリンピック選手団とパラリンピック選手団で統一された最初の大会でもありました。これは、障害のあるアスリートとないアスリートが同じ国の代表として一体であることを象徴する取り組みでした。

長野パラリンピックは、知的障害者参加という画期的な試みとそれに続く困難、そして日本におけるパラリンピックの社会的認知度向上という、様々な側面を持つ歴史的な大会でした。

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