1999年のインディ・レーシング・リーグ・シリーズ

1999年のインディ・レーシング・リーグ(IRL)は、インディカー・シリーズとして4年目を迎えたシーズンでした。この年は、シリーズの歴史に暗い影を落とす痛ましい事故が発生しました。第3戦として開催されたロウズ・モータースピードウェイ（旧シャーロット・モータースピードウェイ）でのレース中、発生したクラッシュでコース上に散乱した部品が、フェンスを越えて観客席に飛散し、観客3人が死亡、8人が負傷する惨事が起こりました。この事故を受け、IRLはレースを中断。当初11戦で予定されていたシーズンは、10戦でチャンピオン争いが決まることとなりました。この事故以降、IRLはロウズ・モータースピードウェイでのレース開催を見送っています。

技術面では大きな変化がありました。長年IRLのタイヤを供給してきたグッドイヤーが、このシーズン限りで撤退。翌2000年シーズンからは、ファイアストンが単独供給体制となりました。これは、IRLがCART（現在のIndyCar Series）と明確に差別化を図ろうとした動きの一環とも考えられます。

ドライバー層にも変化が見られました。ベテラン勢に加え、若手ドライバーの台頭も目立ちました。中でも注目を集めたのは、19歳でIRLにデビューした女性ドライバー、サラ・フィッシャーです。テキサス・モータースピードウェイで行われた最終戦で、彼女はIRLの舞台に立ちました。彼女の参戦は、モータースポーツ界における女性の活躍の象徴的な出来事となりました。

また、このシーズンは、チーム事情の変化も特徴的でした。エディ・チーバーは、参戦台数の減少に苦しんでいたインフィニティエンジンから、新たなエンジン供給先へと移行しました。

チャンピオンシップ争いは、前年まで目立った成績を残せていなかったケン・レイが、トップチームへの抜擢を機に才能を開花させました。彼は3勝を挙げ、見事シリーズチャンピオンに輝きました。これは、彼の才能とチームの強力なサポートが相まった結果と言えるでしょう。

ポイントシステムは前年と同様、優勝から10位までが50、40、35、32、30、28、26、24、22、20ポイントを獲得し、それ以降は順位に応じて1ポイントずつ減点されました。29位以下は全て1ポイントでした。さらに、予選上位3名には3、2、1ポイントのボーナスポイントが、最多リードラップ獲得者には2ポイントのボーナスポイントが加算されるシステムでした。この複雑なポイントシステムによって、チャンピオンシップ争いは最後まで目が離せない展開となりました。

1999年シーズンは、悲劇的な事故から、若手ドライバーの台頭、そしてタイヤ供給体制の変更など、多くの出来事が凝縮されたシーズンでした。このシーズンの出来事は、IRLの歴史において重要な転換期となったと言えるでしょう。翌シーズン以降も、IRLは安全対策の強化や、新たな技術開発に力を入れることとなります。1999年シーズンの経験は、現在のインディカー・シリーズの発展に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

もう一度検索