2-ナフチルアミン

2-ナフチルアミン：発がん性と規制の現状

2-ナフチルアミンは、芳香族アミンと呼ばれる有機化合物の一種です。β-ナフチルアミンとも呼ばれ、特徴的な臭気を有する無色の薄片状結晶ですが、空気中では徐々に赤色に変色します。

物理的性質と存在

2-ナフチルアミンは、独特の臭いを持ち、空気中で酸化されやすく、次第に赤みを帯びていきます。この化合物は、タバコの煙、特に副流煙中に含まれることが確認されており、調理油の油煙からも検出された報告があります。私たちの生活環境において、間接的に曝露する可能性のある物質と言えるでしょう。

製法

2-ナフチルアミンは、ナフタレンから直接合成するよりも、2-ナフトールを原料として合成されます。これは、ナフタレンのβ位が置換反応を起こしにくいという性質によるものです。一般的には、2-ナフトールとアンモニアを高温高圧下で反応させ、亜硫酸アンモニウムを触媒として用いるブッヘラー反応によって合成されます。この方法は、効率的な2-ナフチルアミンの製造に貢献しています。

過去の用途と発がん性

かつて、2-ナフチルアミンはアゾ色素の合成中間体として、またゴム工業における抗酸化剤として広く利用されてきました。しかし、深刻な問題として、強い発がん性が明らかになっています。そのため、現在では毒性の低い物質への代替が進み、ほとんど使用されていません。

発がん性に関する詳細

国際がん研究機関（IARC）は、2-ナフチルアミンをヒトに対する発がん性がある物質として、グループ1に分類しています。この分類は、2-ナフチルアミンに曝露した労働者における膀胱がんの多発、動物実験における発がん性の確認、そして肝臓における代謝過程でDNAを修飾し、変異原性を示すといった複数の根拠に基づいています。特に膀胱がんとの関連性が強く、長期間の曝露は極めて危険です。

法規制

2-ナフチルアミンの発がん性が明らかになったことから、世界各国で製造・使用が厳しく規制されています。日本では1972年の労働安全衛生法で、試験研究用途を除き、製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されています。運搬についても、船舶安全法や航空法で規制の対象となっています。他にも、スイス（1938年）、イギリス（1952年）、EU（1998年）など、多くの国や地域で製造や使用が禁止されています。GHS（化学物質の分類および表示に関する世界調和システム）においても、発がん性物質（区分1A）に分類されており、国際的な規制の強化が進められています。国連番号は1650です。

まとめ

2-ナフチルアミンは、かつて産業的に利用されていましたが、その強い発がん性から、現在では各国で厳しく規制されています。その毒性と発がん性のリスクを理解し、適切な取り扱いと管理を行うことが重要です。この物質を取り扱う際には、関係法規を遵守し、安全対策を徹底することが求められます。

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