2-ブトキシエタノール

2-ブトキシエタノール：特性、用途、安全性、規制

2-ブトキシエタノールは、無色の液体で、独特の甘いエーテル臭を持つ有機化合物です。グリコールエーテルの一種であり、水と油の両方を溶解する優れた溶解力を持つため、様々な工業製品や家庭用品の溶剤として広く利用されています。

物理化学的特性

化学式はC6H14O2で表され、エチレングリコールのブチルエーテルとも呼ばれます。比較的揮発性が低く、界面活性作用も持ちます。

製造方法

工業的には、ブタノールとエチレンオキシドを触媒の存在下で反応させるエトキシル化反応、またはブタノールと2-クロロエタノールを反応させるエーテル化反応によって製造されます。実験室レベルでは、三塩化ホウ素を用いた2-プロピル-1,3-ジオキソランの開環反応でも合成可能です。近年、ヨーロッパでの生産量は年間181キロトンに達し、世界的には200～500キロトンと推定されています。

用途

2-ブトキシエタノールの主な用途は溶剤としてです。塗料、コーティング剤、洗浄剤、インクなど、多様な製品に使用されています。その高い溶解力から、アクリル樹脂配合物、アスファルト離型剤、消火剤、グリース除去剤、ラテックス塗料、エナメル、印刷ペーストなど、実に様々な製品に含まれています。また、食品添加物としても、抗菌剤、消泡剤、安定剤、接着剤などに使用が認められています。

特に石油産業においては、水圧破砕や油膜分散剤の成分として重要な役割を果たしています。その界面活性作用により、油と水の界面張力を下げ、油井からの原油採取効率を高めるのに役立ちます。2010年のメキシコ湾原油流出事故では、油流出分散剤の主要成分としても使用されました。

安全性

急性毒性は比較的低く、ラットのLD50値は2.5g/kgです。しかし、高濃度への長期間曝露は、動物実験において副腎腫瘍を引き起こす可能性が示唆されています。一部の動物実験では発がん性が報告されていますが、これらの結果はげっ歯類特有の生理的要因に起因する可能性があり、ヒトへの発がん性リスクを直接示すものではありません。そのため、国際安全衛生センター(OSHA)では発がん性物質として規制されていません。

環境への影響

2-ブトキシエタノールは、空気中では酸素ラジカルと反応して比較的速やかに分解されます。土壌や水中でも生分解性があり、主要な環境汚染物質とは見なされていません。また、生物蓄積性もありません。

ヒトへの暴露と健康影響

ヒトは、皮膚接触、吸入、経口摂取などを通じて2-ブトキシエタノールに暴露する可能性があります。労働者への曝露濃度の規制値は設定されており、曝露レベルのモニタリングも可能です。動物実験では、高濃度への暴露が骨格異常や神経学的影響を引き起こす可能性が示されています。

規制状況

カナダやアメリカ合衆国では、2-ブトキシエタノールに関する規制が設けられています。カナダでは、特定濃度以下の製品については規制が緩和されています。アメリカ合衆国では、カリフォルニア州で危険物質に指定され、暴露濃度に関する規制が設けられています。食品医薬品局(FDA)は、食品添加物としての使用を認めています。

まとめ

2-ブトキシエタノールは、その優れた溶解力から様々な産業で広く利用されている一方、健康への影響や環境への影響についても考慮する必要があります。適切な取り扱いと安全管理、そして規制への準拠が重要です。今後の研究により、その安全性や環境への影響に関する理解がさらに深まることが期待されます。

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