2000年の台風

2000年は、太平洋北西部で発生する熱帯低気圧、いわゆる台風に関して、いくつかの重要な変更点がありました。この年から、世界気象機関熱帯低気圧プログラムの台風委員会で採択された「台風のアジア名」が用いられるようになり、台風の呼び方が国際的に統一されました。また、前年の玄倉川水難事故を受けて、熱帯低気圧や台風の規模を表す際に使用されていた「弱い」「並の強さ」「中型」などの表現が廃止され、より具体的な情報提供へと変化しました。

2000年の最初の台風は5月に発生し、7月から9月にかけては16個の台風が集中して発生しました。特に7月の台風3号は、関東地方から北海道の太平洋側にかけて記録的な大雨を降らせ、家屋の浸水被害が5,600棟以上に及んだほか、全国的に強風による被害も発生しました。9月の台風14号は、東海地方を中心に記録的な豪雨をもたらし、いわゆる「東海豪雨」として知られる激甚災害となりました。12月30日9時に発生した台風23号は、統計が残る1951年以降で最も遅い発生日時となり、年を跨いで活動する「年越し台風」となりました。

また、8月にはハワイの北西で発生した熱帯低気圧16Wが、日付変更線を越えて東進し、トロピカルストームの勢力に発達したため、中部太平洋ハリケーンセンター（CPHC）によって「Wene」という名前が付けられました。

各台風の詳細

以下に、2000年に発生した主な台風の詳細を記載します。

台風1号（ダムレイ）：5月3日にパラオ近海で発生し、5日に熱帯低気圧に成長。7日に台風となり「ダムレイ」と命名されました。日本列島南方の太平洋上を北東に進み、9日に最大勢力に達しましたが、その後勢力を弱め、12日に温帯低気圧に変わりました。

台風2号（ロンワン）：5月15日にフィリピン北西で発生し、19日に台風となり「ロンワン」と命名されました。その後、温帯低気圧に変わり、東経180度を越えて観測対象から外れました。フィリピン名は「ビリン」です。

台風3号（キロギー）：6月30日にフィリピンの東の海上で発生し、7月3日に台風となり「キロギー」と命名されました。急速に発達し、日本列島に接近。関東地方を中心に大雨などの被害をもたらしました。フィリピン名は「ディタン」です。

台風4号（カイタク）：7月2日にフィリピン北西で発生し、6日に台風となり「カイタク」と命名されました。台湾に上陸した後、中国大陸へ進み、温帯低気圧になりました。フィリピンのルソン島や台湾、中国で大きな被害が出ました。フィリピン名は「エデン」です。

台風5号（テンビン）：7月13日に太平洋上で発生し、19日に台風となり「テンビン」と命名されました。日本列島に接近しましたが、勢力は弱く、22日に熱帯低気圧になりました。

台風6号（ボラヴェン）：7月17日にフィリピン南東の海上で発生し、26日に台風となり「ボラヴェン」と命名されました。奄美群島付近で停滞した後、朝鮮半島に達して温帯低気圧に変わりました。フィリピン名は「フアニン」です。

台風7号（チャンチー）：7月27日に発生し、29日に台風となり「チャンチー」と命名されました。弱い勢力のまま北上し、熱帯低気圧として消滅しました。

台風8号（ジェラワット）：7月29日に発生し、8月1日に台風となり「ジェラワット」と命名されました。急速に発達しながら西進し、小笠原諸島や南西諸島に接近。上海付近に上陸した後、熱帯低気圧になりました。

台風9号（イーウィニャ）：8月10日に発生し、同日台風となり「イーウィニャ」と命名されました。日本列島上空の太平洋高気圧に阻まれ進路を変え、温帯低気圧になりました。

台風10号（ビリス）：8月14日にグアムの南東海上で発生し、19日に台風となり「ビリス」と命名されました。急速に発達し、台湾に上陸。その後、中国大陸へ進み、温帯低気圧になりました。グアム、台湾、中国で大きな被害が出ました。

台風11号（ケーミー）：8月19日に南シナ海で発生し、21日に台風となり「ケーミー」と命名されました。ベトナムに上陸し、熱帯低気圧になりました。ベトナムでは高潮などの被害が出ました。

台風12号（プラピルーン）：8月22日にグアムの南東海上で発生し、27日に台風となり「プラピルーン」と命名されました。南西諸島に接近し、朝鮮半島を横断して温帯低気圧になりました。台湾、中国、朝鮮半島で大きな被害が出ました。フィリピン名は「ルシン」です。

台風13号（マリア）：香港の南の海上で発生し、28日に台風となり「マリア」と命名されました。広東省付近に上陸し、熱帯低気圧になりました。

台風14号（サオマイ）：8月31日に太平洋上で発生し、9月2日に台風となり「サオマイ」と命名されました。急速に発達し、南西諸島に接近。朝鮮半島に上陸し、温帯低気圧になりました。日本では東海豪雨として記録的な被害をもたらしました。フィリピン名は「オサン」です。

台風15号（ボーファ）：9月4日にフィリピンの東の海上で発生し、7日に台風となり「ボーファ」と命名されました。南西諸島に接近し、フィリピン北部で熱帯低気圧になりました。フィリピン名は「ニンニン」です。

台風16号（ウーコン）：9月4日に南シナ海で発生し、6日に台風となり「ウーコン」と命名されました。ベトナムに上陸し、熱帯低気圧になりました。

台風17号（ソナムー）：9月14日に北マリアナ諸島北西の海上で発生し、15日に台風となり「ソナムー」と命名されました。日本列島に接近した後、温帯低気圧になりました。

台風18号（サンサン）：9月14日にマーシャル諸島付近で発生し、18日に台風となり「サンサン」と命名されました。急速に発達し、温帯低気圧になりました。

台風19号（ヤギ）：10月20日に北マリアナ諸島近海で発生し、22日に台風となり「ヤギ」と命名されました。沖縄県に接近し、熱帯低気圧になりました。フィリピン名は「パリン」です。

台風20号（シャンセン）：10月24日にパラオ近海で発生し、26日に台風となり「シャンセン」と命名されました。フィリピンを横断した後、台湾に接近。温帯低気圧になりました。フィリピンと台湾で大きな被害が出ました。フィリピン名は「レミン」です。

台風21号（バビンカ）：10月28日にパラオ近海で発生し、11月1日に台風となり「バビンカ」と命名されました。フィリピンを横断し、熱帯低気圧になりました。フィリピンでは洪水や土砂崩れで大きな被害が出ました。フィリピン名は「シニエン」です。

台風22号（ルンビア）：11月25日にパラオ近海で発生し、28日に台風となり「ルンビア」と命名されました。フィリピン中部を横断し、熱帯低気圧になりました。フィリピンで洪水や土砂崩れが発生しました。フィリピン名は「トエン」です。

* 台風23号（ソーリック）：12月28日にフィリピンの東の海上で発生し、30日に台風となり「ソーリック」と命名されました。フィリピンから離れた後、急速に発達しましたが、その後勢力を弱め、熱帯低気圧となりました。フィリピン名は「ウェルプリン」です。

この年の台風は、アジア名が導入された最初の年であり、多くの台風が各地に被害をもたらした年として記録されています。特に東海豪雨やフィリピン、台湾での被害は甚大でした。

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