2003年イギリスグランプリ

2003年イギリスグランプリは、イギリスのシルバーストン・サーキットで2003年7月20日に開催されたF1レースです。優勝はポールポジションからスタートしたルーベンス・バリチェロでしたが、レースはニール・ホランという人物によるコースへの侵入という異例の事態によって記憶されることとなりました。

ホランは元司祭で、聖職を剥奪されていました。彼は茶色のキルトを身につけ、「聖書を読みなさい」「聖書は常に正しい」といった宗教的なメッセージが書かれた垂れ幕を掲げ、時速約280キロメートルで走行するマシン群に向かってハンガーストレートを横断したのです。

レースの展開は、まずスタートから見てみましょう。バリチェロはポールポジションからスタートするも、トゥルーリとライコネンに先行を許します。シューマッハ兄弟はそれぞれ4位と5位でレースをスタートしました。その後、6周目にクルサードのマシンにトラブルが発生、セーフティーカー導入の事態となります。

レース再開後、バリチェロはライコネンを抜きトップに立ちますが、そこにホランのコース侵入が発生。再びセーフティーカーが導入され、多くのマシンがピットストップを行う展開に。このピットストップのタイミングとセーフティーカー走行が絡み合うことで、順位は大きく変動します。ミハエル・シューマッハ、アロンソ、モントーヤといった有力ドライバーはトップ10から脱落しました。

一方、セーフティーカー導入時にピットインしなかったダ・マッタとパニスは、それぞれ1位と2位に浮上。クルサードも3位につけます。レース再開後、ライコネンはトゥルーリ、クルサードをパスしトップ争いに加わります。バリチェロはラルフ・シューマッハ、モントーヤをパスするなど順位を上げていきます。その後、バリチェロはトゥルーリをかわし、トップ争いを繰り広げていたダ・マッタ、パニスにも迫ります。ダ・マッタがピットインした後、ライコネンがトップに立ちますが、バリチェロが猛追し、最終的にライコネンをパスして優勝を手にしました。

ホランのコース侵入は、11周目のベケット・コーナーからハンガーストレートへの進入地点で発生しました。彼はフェンスを乗り越え、マシン群に向かって走っていったのです。多くのマシンはホランを避けなければならず、危険な状況となりました。最終的にはコース脇の芝生エリアでマーシャルに拘束されました。

ホランは後に不法侵入で有罪判決を受け、2ヶ月の拘禁刑に処されました。彼は神からの啓示だと主張しましたが、検察側は事前に垂れ幕を用意していたことなどを指摘し、計画的な犯行であると主張しました。この事件は、1977年の南アフリカGPでのコース横断事故、2000年ドイツGPでの従業員によるコース侵入事件など、過去の類似事例と比較検討されました。

この事件を受け、F1関係者からはシルバーストン・サーキットのF1開催継続について懸念する声も上がりました。しかし、ドライバーやチーム代表からはサーキットを擁護する声も上がり、レースそのものは高い評価を得ていました。コース侵入者を取り押さえたマーシャルには、勇敢な行動に対し表彰が行われました。

レース結果としては、バリチェロの優勝、モントーヤの2位、ライコネンの3位という結果に。ピッツォニアはこのレースがシーズン最後のレースとなり、チームを離れることになります。

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