2004年アテネオリンピックの陸上競技・男子ハンマー投
2004年アテネオリンピックの陸上競技における男子ハンマー投は、単なる競技の結果だけでなく、その後にドーピング問題によって大きく歴史が塗り替えられた異例の大会として記憶されています。この種目は2004年8月20日から22日にかけて行われ、24の国・地域から35名の選手が参加しました。
近代オリンピックにおいてハンマー投は1896年の第1回大会を除く全ての夏季大会で実施されており、アテネ大会は24回目の開催でした。決勝には12名の選手が進出し、そのうち7名が前回2000年のシドニー大会にも出場経験のある実力者でした。中には1996年アトランタ大会の金メダリストであるシモン・ジョルコフスキ（ポーランド）、シドニー大会の銀メダリストであるニコラ・ビッツォーニ（イタリア）、同じく銅メダリストであるイゴール・アスタプコビッチ（ベラルーシ）といったベテラン選手も名を連ねていました。また、日本の室伏広治選手もシドニー大会に続き出場しており、2003年には当時世界歴代4位（現在も上位に位置する）となる84メートル86センチを記録するなど、メダル獲得の有力候補の一人として注目されていました。優勝争いは、2003年世界選手権優勝者のイワン・チホン（ベラルーシ）、2002年欧州選手権王者のアドリアン・アヌシュ（ハンガリー）、そして室伏広治選手の三名が中心になると予想されていました。アルバニア、タジキスタン、トルコは、この大会で初めて男子ハンマー投に選手を送りました。一方、アメリカ合衆国は1980年のボイコット大会を除いて全ての大会に出場しており、最多となる23回目の参加となりました。
競技はまず予選が行われ、選手は3回の投擲機会を得ます。78メートル00センチ以上の記録を出した選手、あるいはそれに満たない場合は上位12名が決勝に進出できるというルールでした。決勝では、予選を勝ち上がった12名が最初の3回を投げ、その時点での上位8名にさらに3回の試技が与えられるという形式で争われました。出場するためには、予選期間中（2003年1月1日〜2004年8月9日）に定められた参加標準記録をクリアする必要があり、A標準記録（78メートル65センチ）をクリアした国は最大3名、B標準記録（74メートル35センチ）以上の記録を持つ国は1名をエントリー可能でした。
競技終了直後の成績では、アドリアン・アヌシュ選手が優勝、室伏広治選手が2位、イワン・チホン選手が3位という結果でした。しかし、この結果は後にドーピング問題によって大きく覆されることになります。
まず、本来の優勝者であったアヌシュ選手は、大会中のドーピング検査において検体を取り換えた疑いが持たれ、失格処分となりました。この決定により、2位だった室伏広治選手が順位を繰り上げられ、金メダルを獲得することになりました。これは、日本陸上競技におけるハンマー投種目で初のオリンピックメダルであり、さらに男子陸上競技全体としては1936年のベルリンオリンピック以来68年ぶりとなる金メダルという、歴史的な快挙達成となりました。
アヌシュ選手の失格を受けて、3位だったチホン選手は銀メダルに繰り上げられました。しかし、事態はこれで終わりませんでした。2012年にアテネ大会で採取された検体が最新技術によって再検査された結果、チホン選手から禁止薬物であるメタンジエノンの陽性反応が検出されました。これにより、チホン選手は2012年にアテネ大会の成績を取り消されてメダルを剥奪され、さらに同年のロンドンオリンピックへの出場も辞退せざるを得なくなりました。
チホン選手の失格により、今度は4位だったエスレフ・アパク選手（トルコ）が銀メダルに、5位だったワディム・デフヤトフスキー選手（ベラルーシ）が銅メダルにそれぞれ繰り上げられることになりました。ところが、アパク選手は2013年に別のドーピング違反が発覚して2年間の出場停止処分を受けており、デフヤトフスキー選手も2008年の北京オリンピックでのドーピング違反疑惑で国際オリンピック委員会（IOC）から訴訟の対象となっていました。IOCは、これらの選手たちも2004年のアテネ大会以降にドーピング違反による競技からの出場停止処分を受けていた経緯を考慮し、銀メダルと銅メダルを改めて授与しないという異例の決定を下しました。最終的に、メダリストは金メダルを獲得した室伏広治選手ただ一人ということになりました。ただし、IOCが発表した公式な結果リスト上では、アパク選手は「銀メダルなし」の2位として、デフヤトフスキー選手は「銅メダルなし」の3位として記載されているという複雑な状況になっています。
このように、2004年アテネオリンピックの男子ハンマー投は、競技そのもの以上に、後を絶たないドーピング問題によってその結果が二転三転し、最終的にメダリストが一人だけとなるという極めて稀な事例となりました。その混乱の中で、室伏広治選手が日本の陸上競技史に燦然と輝く金字塔を打ち立てた大会として、強く人々の記憶に刻まれています。
近代オリンピックにおいてハンマー投は1896年の第1回大会を除く全ての夏季大会で実施されており、アテネ大会は24回目の開催でした。決勝には12名の選手が進出し、そのうち7名が前回2000年のシドニー大会にも出場経験のある実力者でした。中には1996年アトランタ大会の金メダリストであるシモン・ジョルコフスキ（ポーランド）、シドニー大会の銀メダリストであるニコラ・ビッツォーニ（イタリア）、同じく銅メダリストであるイゴール・アスタプコビッチ（ベラルーシ）といったベテラン選手も名を連ねていました。また、日本の室伏広治選手もシドニー大会に続き出場しており、2003年には当時世界歴代4位（現在も上位に位置する）となる84メートル86センチを記録するなど、メダル獲得の有力候補の一人として注目されていました。優勝争いは、2003年世界選手権優勝者のイワン・チホン（ベラルーシ）、2002年欧州選手権王者のアドリアン・アヌシュ（ハンガリー）、そして室伏広治選手の三名が中心になると予想されていました。アルバニア、タジキスタン、トルコは、この大会で初めて男子ハンマー投に選手を送りました。一方、アメリカ合衆国は1980年のボイコット大会を除いて全ての大会に出場しており、最多となる23回目の参加となりました。
競技はまず予選が行われ、選手は3回の投擲機会を得ます。78メートル00センチ以上の記録を出した選手、あるいはそれに満たない場合は上位12名が決勝に進出できるというルールでした。決勝では、予選を勝ち上がった12名が最初の3回を投げ、その時点での上位8名にさらに3回の試技が与えられるという形式で争われました。出場するためには、予選期間中（2003年1月1日〜2004年8月9日）に定められた参加標準記録をクリアする必要があり、A標準記録（78メートル65センチ）をクリアした国は最大3名、B標準記録（74メートル35センチ）以上の記録を持つ国は1名をエントリー可能でした。
競技終了直後の成績では、アドリアン・アヌシュ選手が優勝、室伏広治選手が2位、イワン・チホン選手が3位という結果でした。しかし、この結果は後にドーピング問題によって大きく覆されることになります。
まず、本来の優勝者であったアヌシュ選手は、大会中のドーピング検査において検体を取り換えた疑いが持たれ、失格処分となりました。この決定により、2位だった室伏広治選手が順位を繰り上げられ、金メダルを獲得することになりました。これは、日本陸上競技におけるハンマー投種目で初のオリンピックメダルであり、さらに男子陸上競技全体としては1936年のベルリンオリンピック以来68年ぶりとなる金メダルという、歴史的な快挙達成となりました。
アヌシュ選手の失格を受けて、3位だったチホン選手は銀メダルに繰り上げられました。しかし、事態はこれで終わりませんでした。2012年にアテネ大会で採取された検体が最新技術によって再検査された結果、チホン選手から禁止薬物であるメタンジエノンの陽性反応が検出されました。これにより、チホン選手は2012年にアテネ大会の成績を取り消されてメダルを剥奪され、さらに同年のロンドンオリンピックへの出場も辞退せざるを得なくなりました。
チホン選手の失格により、今度は4位だったエスレフ・アパク選手（トルコ）が銀メダルに、5位だったワディム・デフヤトフスキー選手（ベラルーシ）が銅メダルにそれぞれ繰り上げられることになりました。ところが、アパク選手は2013年に別のドーピング違反が発覚して2年間の出場停止処分を受けており、デフヤトフスキー選手も2008年の北京オリンピックでのドーピング違反疑惑で国際オリンピック委員会（IOC）から訴訟の対象となっていました。IOCは、これらの選手たちも2004年のアテネ大会以降にドーピング違反による競技からの出場停止処分を受けていた経緯を考慮し、銀メダルと銅メダルを改めて授与しないという異例の決定を下しました。最終的に、メダリストは金メダルを獲得した室伏広治選手ただ一人ということになりました。ただし、IOCが発表した公式な結果リスト上では、アパク選手は「銀メダルなし」の2位として、デフヤトフスキー選手は「銅メダルなし」の3位として記載されているという複雑な状況になっています。
このように、2004年アテネオリンピックの男子ハンマー投は、競技そのもの以上に、後を絶たないドーピング問題によってその結果が二転三転し、最終的にメダリストが一人だけとなるという極めて稀な事例となりました。その混乱の中で、室伏広治選手が日本の陸上競技史に燦然と輝く金字塔を打ち立てた大会として、強く人々の記憶に刻まれています。
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