2010年コートジボワール危機

2010年コートジボワール危機

2010年コートジボワール危機は、2010年末のコートジボワール大統領選挙の決選投票における両候補の勝利宣言に端を発し、同国が二人の大統領を抱える異常事態、事実上の内戦へと発展した一連の事件です。

危機の推移

10年ぶりの大統領選挙

2000年に大統領に就任したローラン・バグボ大統領の任期満了に伴い、2005年に大統領選挙が予定されていました。しかし、コートジボワール内戦などの影響で選挙は延期され、バグボ大統領が引き続き政権を維持しました。2010年10月31日、ようやく大統領選挙が実施され、現職のバグボ大統領と、元首相で野党連合を率いるアラサン・ワタラ氏との間で争われました。

選挙結果の覆り

投票の結果、いずれの候補も過半数を獲得できず、11月28日にバグボ大統領とワタラ氏による決選投票が行われました。投票直後からバグボ陣営は選挙に不正があったと主張し、両陣営間で緊張が高まりました。12月2日、選挙管理委員会は暫定結果としてワタラ氏の得票率が54.1%、バグボ大統領が45.9%であったと発表し、ワタラ氏を当選者と認定しました。しかし、現職のバグボ大統領側がこれに反発し、バグボ大統領の影響力が強いとされる憲法評議会は12月3日、逆にバグボ大統領の当選を認定しました。ワタラ氏の地元を中心とした7選挙区で不正があったとして約60万票を無効とし、その結果、バグボ大統領が51%、ワタラ氏が49%となったことが根拠とされました。

アラサン・ワタラ氏は2011年1月5日のインタビューで、「憲法評議会には選挙結果を追認するか選挙自体を無効にするかの権限しかなく、投票の一部のみを無効化する権限はない」と述べています。

憲法評議会に当選者と認定されたバグボ大統領は、12月4日に大統領就任式を強行しました。一方、ワタラ氏も12月5日に大統領就任宣誓を行い、同日ギヨーム・ソロ氏を首相に指名し新内閣を発足させました。これに対抗し、12月6日にはバグボ大統領がジルベール・アケ氏を首相に指名し、翌7日に新内閣を組織しました。バグボ大統領の内閣では、過去に外国人・国際機関を対象とした暴動行為を扇動指揮したとして国際的な制裁対象となっている人物が青年・職業訓練相に任命されました。ここに大統領・首相が二組存在する二重政府状態が発生しました。

ワタラ氏は大統領執務室に入れず、アビジャン市内のゴルフホテルを仮の大統領府とし、臨時執務室を置いて活動することになりました。2004年から内戦に対応するためコートジボワールに駐留するPKO部隊に警護される事態となりました。これに対し、バグボ大統領は12月18日、内政干渉であるとしてPKO部隊の退去を求めましたが、潘基文国連事務総長は要求を拒否。PKO部隊による物資供給を妨害するなど、事実上の籠城状態となりました。

軍や警察、国営放送局などがバグボ大統領の影響下にあったため、大統領職への居座りを続けました。

国際社会からの非難

国際社会はほぼワタラ氏の当選を認める立場を取り、バグボ大統領に対する退陣要求が強まりました。アフリカ連合はコートジボワールの加盟資格停止を決定。欧州連合はバグボ陣営幹部への制裁を発表。世界銀行はコートジボワールへの援助資金を凍結しました。国際連合はワタラ氏を当選者と認め、バグボ大統領に退陣を要求する声明を発表しました。

国内外の混乱

選挙結果を覆されたワタラ陣営とその支持者はバグボ大統領に強く反発し、両陣営間の衝突が激化しました。多数の死傷者が発生し、隣国リベリアへの難民が急増しました。国際刑事裁判所は国内の流血事件の捜査に乗り出す方針を示しましたが、バグボ支持者による妨害があったとされています。ワタラ側は国際刑事裁判所に対し、捜査団の派遣を要請しました。

事態打開に向けた動き

国際監視下における票の数え直しが提案されました。アフリカ連合代表団はバグボ大統領と会談し、解決策を模索しました。

国際的な軍事介入

膠着状態が続く中、国際連合安全保障理事会はバグボ側の資産凍結を含む決議を採択。ワタラ側はバグボ勢力の拠点アビジャンを総攻撃し、国営テレビなどを支配下に置きました。国際連合は市民保護の名目でPKO部隊に軍事行動を命令。フランス軍が国際連合の作戦を支援する形でアビジャンのバグボ派拠点への空爆を開始しました。バグボ大統領は拘束され、ワタラ側に引き渡されました。

二重政府状態の終結

バグボ大統領の拘束により、4ヶ月以上にわたる混乱はワタラ側の勝利に終わりました。ワタラ氏が大統領に就任し、二重政府状態は解消されました。

バグボに対する刑事訴訟

バグボ大統領は人道に対する罪で国際刑事裁判所に逮捕されましたが、後に無罪となり、コートジボワールに帰国しました。

対立の背景

大統領の座をめぐる騒動の背景には、宗教や地域間の対立がありました。バグボ大統領はキリスト教徒、ワタラ氏はイスラム教徒であり、それぞれ支持基盤が異なっていました。

その他の影響

コートジボワールの治安悪化は、鉱山関連株の下落やチョコレートの高騰など、経済にも影響を与えました。

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