2010年韓国における口蹄疫の流行

2010年韓国における口蹄疫の流行

2010年11月下旬に韓国で発生した口蹄疫の流行は、慶尚北道安東市から始まり、京畿道、江原道、仁川広域市、忠清北道へと急速に拡大しました。この流行は、韓国にとって過去最大規模の被害をもたらし、家畜産業に大きな打撃を与えました。

概要

2010年の口蹄疫流行は、韓国で6回目の発生でした。過去には1934年、2000年、2002年にも流行が確認されています。今回の流行では、韓国の国土の約半分を占める4道1広域市（慶尚北道、京畿道、江原道、仁川広域市、忠清北道）で、58万頭以上の家畜が処分される事態となりました。12月29日には警戒レベルが最高の「深刻」に引き上げられ、国全体を挙げて封じ込めに尽力しました。

流行は、11月20日頃に慶尚北道安東市で始まりました。初期診断の遅れにより、確定診断は11月29日となりました。12月2日には全ての家畜市場が閉鎖されましたが、その後も感染は拡大を続け、12月15日には慶尚北道から200km以上離れた京畿道でも感染が確認されました。この急速な拡大を受け、感染の激しい地域ではワクチン接種が開始されましたが、12月28日には忠清北道にも感染が広がり、事態は深刻化しました。12月31日までに、4道1広域市、32市・郡、71ヶ所で58万頭以上が処分され、損害額は370億円に達しました。

傾向と対策

今回の口蹄疫の特徴として、感染しても典型的な症状を示さないケースが見られました。また、初期の抗体検査で陰性を示すことがあったため、感染の発見が遅れる要因となりました。地理的には、感染が順を追って拡散するのではなく、防疫線を飛び越えて発生する事例も確認されました。感染拡大の主な原因としては、「汚染国への旅行」や「畜産関係車両の往来」が挙げられています。

時系列

2010年11月

11月23日～26日: 慶尚北道安東市の養豚団地で口蹄疫が疑われる豚が見つかるが、検査で陰性とされる。
11月26日: 同団地の子豚が突然死。簡易検査で陰性だったため、移動制限を解除。
11月28日: 農家が国立獣医科学検疫院に届け出。口蹄疫発生国への旅行歴がある経営者の感染の可能性が指摘される。
11月30日: 安東市内の別の農場で牛への感染が確認。予防的処分が開始される。

2010年12月

12月1日～: 安東市で感染が急拡大。全国の家畜市場が閉鎖される。
12月6日～: 慶尚北道全体に感染が拡大。防疫線が破られる。
12月15日～: 京畿道でも感染が確認され、警戒レベルが引き上げられる。
12月22日～: 江原道に感染が拡大し、ワクチン接種が開始される。
12月24日: 仁川広域市で感染確認。
12月28日～: 忠清北道に感染が拡大し、警戒レベルが最高の「深刻」に引き上げられる。
* 12月31日: 4道1広域市、32市・郡、71ヶ所で総殺処分58万頭以上、損害額370億円に達する。

警報レベルと処置

韓国では、2006年に「国家伝染病災難段階」制度が導入されています。今回の口蹄疫流行では、12月15日に「警戒」、12月29日に最高の「深刻」レベルとなりました。これは、家畜伝染病としては初の「深刻」発令でした。「深刻」レベルでは、政府全体が対策に動き、防疫体制が大幅に強化されました。

防疫システム

2010年12月16日時点で、国家レベルの防疫担当者は40人でした。国立獣医科学検疫院が確定診断や追跡調査を担当し、24時間体制で検査が行われました。しかし、人員不足のため、現場では過酷な勤務状況が強いられました。

種牛・精液の存続・保管体制

韓国国内唯一の種牛飼育施設では、口蹄疫の拡大に備え、種牛や精液の保管体制が強化されました。候補種牛は安全な場所へ移動され、精液の一部は別の場所へ移送されました。

脚注

この大流行は、韓国の畜産業界に大きな教訓を残しました。感染拡大の早期発見と迅速な対応の重要性、そして、防疫体制の強化が不可欠であることを示しました。また、家畜伝染病に対する国家レベルでの危機管理体制の重要性が再認識されました。

この情報が、今後の家畜伝染病対策に役立つことを願います。

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