2019年サーハー航空ボーイング707着陸失敗事故

2019年サーハー航空ボーイング707着陸失敗事故

2019年1月14日に発生した、サーハー航空のボーイング707-3J9C型機による航空事故です。キルギスのマナス国際空港からイランのパヤム国際空港へ向かっていた貨物便が、着陸時にイランのアルボルズ州にあるファス空軍基地でオーバーランし、大破しました。この事故により、乗員16名のうち15名が命を落とすという、非常に痛ましい結果となりました。

事故機について

事故を起こしたボーイング707-3J9Cは、製造番号21128として製造され、当初はEP-CPPとして登録されていました。この機体は、イラン空軍からサーハー航空にリースされていたもので、1976年11月19日に初飛行を終えた、機齢40年のベテラン機でした。当初はイラン帝国空軍に5-8312として納入され、その後2000年2月27日にサーハー航空へ移籍し、EP-SHKとして登録されました。

2009年8月3日には、アフヴァーズ空港発メヘラーバード国際空港行きのサーハー航空124便として運行中に、第2エンジンが故障するというトラブルに見舞われ、アフヴァーズ空港へ緊急着陸を余儀なくされました。その後、機体は修理され、2015年12月にイラン空軍に返却されましたが、2016年5月に再びサーハー航空に貸し出され、その際にEP-CPPとして再登録されました。この機体は、民間で使用されていた唯一のボーイング707でした。

事故の経緯

事故機は、マナス国際空港からパヤム国際空港へ食肉を輸送する国際貨物便として運航していました。現地時間午前8時30分頃、ファス空軍基地へ緊急着陸したと報じられています。一部報道では、事故機が誤って同基地に着陸したと伝えられており、当時は悪天候であったことも報告されています。着陸時、機体は滑走路をオーバーランし、近くの住宅地に突っ込みました。事故後、機体は炎上し、大きな被害を出しました。

乗員は16名または17名とされ、唯一航空機関士が救助されましたが、重傷を負い、病院に搬送されました。幸いにも、地上での死傷者は報告されていません。

事故調査

事故発生後、直ちに調査が開始され、コックピットボイスレコーダーが残骸から回収されました。事故原因は現在も調査中ですが、パイロットが空港を誤認した可能性が指摘されています。パヤム国際空港とファス空軍基地は数キロメートルしか離れておらず、滑走路のレイアウトもほぼ同じだったため、誤認しやすい状況でした。ボーイング707の着陸には通常2,500メートル（8,200フィート）の滑走路が必要とされますが、ファス空軍基地の滑走路長は1,300メートル（4,300フィート）しかありませんでした。この滑走路長の不足も、事故の一因となった可能性があります。

過去にも、パヤム国際空港とファス空軍基地を取り違える事例が発生していました。2018年11月16日には、155人が搭乗したターバーン航空のMD-88が、誤ってファス空軍基地の滑走路へ2度進入するという出来事がありました。この機体は高度1メートル程度まで降下しましたが、最終的にはパヤム国際空港への着陸に成功しました。この事例からも、両空港の誤認が起こりやすい状況であったことが伺えます。

この事故は、航空業界における空港誤認の危険性、そして機体の老朽化や悪天候など、複数の要因が重なった悲劇として、多くの教訓を残すものとなりました。

もう一度検索