2019年ブーゲンビル独立住民投票

2019年、パプアニューギニアの自治州であるブーゲンビル州において、その将来の政治的地位を決定するための住民投票が実施されました。この投票は、ブーゲンビルがパプアニューギニアの一部として自治を継続するか、あるいは独立国家として歩み始めるかという極めて重要な選択肢を住民に問うものでした。2019年11月23日から12月7日までの約2週間にわたって投票が行われ、開票の結果、驚異的な98パーセント以上の票が独立賛成に投じられました。ただし、この住民投票の結果自体に法的な拘束力はなく、最終的な判断はパプアニューギニア国会に委ねられることになっています。

住民投票実施の背景

住民投票の実施には、ブーゲンビルの複雑な歴史が深く関わっています。特に、ブーゲンビルに位置するパングナ銅山からの利益分配をめぐり、中央政府との間で長年にわたり対立が続いていました。この緊張は1988年に内戦へと発展し、中央政府軍、ブーゲンビル独立を目指すブーゲンビル革命軍、さらには外国人傭兵などが入り乱れる激しい衝突が10年以上にわたり繰り広げられました。この悲惨な内戦は、2万人を超える尊い命を奪った末、ようやく停戦に至りました。

内戦終結後、2001年8月30日に締結された和平協定は、自治政府の樹立と将来の政治的地位に関する住民投票の実施を盛り込みました。協定では、自治政府樹立から10年から15年後に住民投票を行うことが約束されており、これに基づき2019年に投票が実現することになったのです。この投票では、パプアニューギニア国内に留まり自治権を拡大する道を選ぶか、それとも完全な独立国家を目指すかという二つの選択肢が明確に提示されました。

住民投票の実施過程と準備

公正かつ円滑な住民投票を実施するため、2017年1月24日には独立した行政機関であるブーゲンビル国民投票委員会が設置されました。委員会は準備を進め、2019年9月28日に投票を11月23日から12月7日までの期間で行うことを発表しました。有権者登録は事前に実施され、18歳以上のブーゲンビリア人が対象となりました。最終的に、206,731人が有権者として登録を完了しました。この中には、ブーゲンビル在住者だけでなく、域外に居住するブーゲンビリア人も含まれていました。

投票方法としては、従来の投票所での投票に加え、郵便投票も認められました。郵便投票は2019年10月15日から11月22日午後4時まで受け付けられ、投票日当日に投票所から一定以上離れている場合や、病気、身体的な理由、育児や宗教上の理由などで投票所へ赴くことが困難な有権者が利用できる措置が取られました。投票の公正性を確保するため、パプアニューギニア政府は諸外国に対して選挙監視団の派遣を要請し、日本を含む複数の国がこれに応じ、監視団を派遣しました。

投票は指定された829カ所の投票所で、連日午前8時から午後6時まで行われました。ブーゲンビル島内だけでなく、パプアニューギニア本土、オーストラリア、ソロモン諸島にも在外投票所が設置され、域外に住む有権者も投票機会を得られました。投票開始前には、11月20日午前0時から投票開始時刻である23日午前8時まで、一切の投票運動が禁止される期間が設けられました。

投票結果とその意義

2019年12月7日に投票が締め切られた後、速やかに開票作業が進められ、12月15日頃に公式な結果が発表されました。事前の予測では独立派の圧倒的な勝利が見込まれていましたが、信頼できる世論調査が限られていたため、結果がどうなるかに関心が集まっていました。しかし、開票された結果は事前予測を裏付けるものとなり、投じられた票の98パーセント以上が独立を支持するという圧倒的なものでした。

この結果は、ブーゲンビル住民の独立への強い意思を示すものとなりました。繰り返しになりますが、この投票結果そのものに法的な拘束力はありません。最終的に独立を承認するか否かは、パプアニューギニア国会の判断に委ねられています。しかし、これほどまでの高率で独立が支持されたことは、パプアニューギニア中央政府や国際社会に対して、ブーゲンビル住民の明確な願いを強く印象付けることとなりました。この圧倒的な賛成結果は、今後の独立に向けた交渉や、パプアニューギニア国会での議論において、ブーゲンビル側に大きな政治的な圧力を与えるものと分析されています。住民投票の成功とその結果は、ブーゲンビルが長年の内戦を経て、自らの未来を選択するプロセスにおける重要な一歩となりました。

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