2019年逃亡犯条例改正案

2019年香港逃亡犯条例改正案：民主化デモへの導火線

2019年、香港を揺るがした逃亡犯条例改正案。この法案は、中国本土、マカオ、台湾への容疑者引き渡しを容易にするもので、香港社会に大きな衝撃を与えました。

改正案の概要

改正案の核心は、容疑者の身柄引き渡し手続きの簡素化です。これにより、中国本土への引き渡しが容易になり、香港の司法独立性が損なわれるという懸念が広く共有されました。

改正の背景には、台湾で発生した香港人カップルによる殺人事件がありました。容疑者は香港に逃亡し、既存の条例では台湾への引き渡しが不可能だったことから、香港政府は改正案を提出しました。

対象となる犯罪は殺人罪をはじめ、贈収賄、入出国審査官に対する詐欺など、7年以上の懲役刑が科される可能性のある30種類以上の重大な犯罪です。また、中国本土からの要請に基づき、資産凍結や差押えを行うことも可能になるという規定が含まれていました。

この改正案は、香港の弁護士団体や宗教団体、教育機関などから強い反対を招きました。中国本土の司法制度への不信感、人権侵害の恐れ、香港の自治権への脅威などが反対理由として挙げられました。

審議の経緯と反対運動

改正案は、香港立法会で審議されましたが、民主派議員による激しい抵抗に遭いました。委員会での審議は、親政府派と民主派の激しい対立によって何度も中断、延期され、手続き上の不正や妨害行為が繰り返し発生しました。

一方、香港市民による大規模な反対デモが連日開催され、その規模は主催者発表で100万人以上にも及びました。デモ隊と警察との衝突も発生し、香港社会は深刻な分断状態に陥りました。

国際社会からも強い批判が集中しました。アメリカ、イギリス、カナダ、欧州連合など多くの国々が、香港の司法独立性への懸念、人権侵害の可能性などを指摘し、香港政府に改正案の撤回を強く求める声明を発表しました。

改正案の撤回とその後

激しい反対運動と国際社会の圧力を受け、香港政府は最終的に改正案の撤回を発表しました。しかし、この撤回は、香港市民の怒りを鎮めるには不十分でした。逃亡犯条例改正案をめぐる出来事は、香港における民主化運動の高まりと、中国政府との間の緊張の高まりを象徴する出来事となりました。

背景：逃亡犯条例の制定と台湾殺人事件

逃亡犯条例は、イギリス統治時代に制定され、その後も香港の司法制度の独立性を維持するために重要な役割を果たしてきました。しかし、中国本土との間には犯罪人引き渡し条約が締結されていなかったため、今回の事件のような状況では、既存の条例では対処が困難でした。

台湾で発生した殺人事件は、改正案提出の直接的な引き金となりました。この事件では、香港人容疑者が台湾で殺人事件を起こした後、香港に逃亡したため、既存の法律では台湾への引き渡しが不可能でした。この事件が、香港政府に改正案提出を急がせる要因となりました。

国際社会の反応

逃亡犯条例改正案をめぐっては、国際社会から多様な反応が寄せられました。

中国政府: 改正案を支持し、外国勢力の干渉を批判しました。
台湾: 改正案に強く反対し、容疑者引き渡しを拒否しました。
アメリカ: 香港の一国二制度への懸念を表明し、改正案撤回を求めました。
イギリス: 英中共同声明への適合性を強調し、改正案に反対しました。
* 欧州連合: 香港政府に外交申し入れを行い、抗議しました。

これらの国際的な反応は、香港政府に大きな圧力をかけることとなり、最終的な撤回へとつながりました。しかし、改正案をめぐる出来事は、香港と中国、そして国際社会との間の関係に大きな影を落としました。この事件は、2019年から2020年にかけて香港で発生した大規模な民主化デモの大きな要因の一つとなりました。

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