英中共同声明

中英共同声明：香港の命運を分けた歴史的合意

1984年12月19日、中華人民共和国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国は、香港の将来に関する共同声明に調印しました。この「中英共同声明」は、香港の主権を1997年にイギリスから中国へ移譲することを決定づけ、香港の歴史における重要な転換点となりました。

声明の概要

共同声明は、中国が1997年7月1日に香港の主権を回復することを明記しています。同時に、中国は香港において「一国二制度」を導入し、香港の資本主義制度を50年間維持することを約束しました。この制度の下、香港は高度な自治権を保持し、独自の経済、法律、社会システムを維持することが認められました。これらの内容は、後の香港特別行政区基本法に引き継がれ、香港の将来の枠組みを定める基盤となりました。

しかし、中国政府は2017年、この声明は歴史的文書であり、もはや拘束力を持たないと主張しました。これにより、声明の有効性や香港の自治に対する懸念が高まりました。

歴史的背景

香港の歴史は、19世紀のアヘン戦争に端を発します。清朝はイギリスに敗れ、香港島を割譲しました。その後、九龍半島もイギリスの支配下に入り、さらに新界地域は99年間の租借という形でイギリス領となりました。

1941年には日本軍が香港を占領しましたが、1945年に日本が降伏するとイギリスが香港の統治を再開しました。その後、中華人民共和国が成立し、香港の将来に関する交渉がイギリスとの間で開始されました。

1980年代初頭、イギリスと中国は香港の返還に関する交渉を開始しました。当初、両国は強硬な姿勢を崩しませんでしたが、最終的には鄧小平の提案した「一国二制度」と「港人治港」の原則に基づいて合意に至りました。

署名と批准

1984年9月26日、中英両国は共同声明と3つの付属書の草案に署名しました。同年12月19日、北京で正式な署名が行われ、中国の趙紫陽国務院総理とイギリスのマーガレット・サッチャー首相が共同声明に署名しました。

1985年5月27日、両国が批准文書を交換し、国際連合に登録されたことで、共同声明は正式に発効しました。これにより、香港は返還までの14年間の過渡期に入ることになりました。

評価とその後

中英共同声明は、イギリス国内で物議を醸しました。一部の政治家は、イギリスが香港を中国に返還する義務はなかったと批判し、外務省が貿易関係を優先したと非難しました。また、サッチャー首相が中国の要求に屈したという見方もありました。

一方で、香港の地理的な状況や食料供給の問題から、香港島と九龍を維持することは不可能だったという意見もあります。中国側は交渉時に武力行使や水の供給停止を示唆し、サッチャー首相に大きな衝撃を与えたとされています。

声明締結後、中英合同連絡グループが設立され、香港の制度や過渡期の措置について協議が行われました。しかし、中国とイギリスの間では「現行」の定義が異なり、両国間の意見の相違が生じました。

1997年7月1日、香港は正式に中国に返還され、香港特別行政区が設立されました。これにより、156年間にわたるイギリスの植民地支配は終わりを告げました。

声明を巡る議論

2014年、中国はイギリスに対し、中英共同声明の成果に関する共同声明への署名を要求しました。この動きに対し、中国は一国二制度の実施が順調であることをアピールし、国際社会の批判を封じようとしているとの見方が示されました。結局、両国は共同声明を発表しましたが、声明の解釈を巡り、議論は続きました。

イギリス議会は、中英共同声明と香港基本法の実施状況を調査しようとしましたが、中国政府は調査団の入国を拒否しました。この出来事は、中英関係の緊張を高めました。

その後の展開

2020年、中国は香港国家安全維持法を制定し、香港の自治権を侵害しているとの批判が国際社会から起こっています。この法律は、一国二制度の原則が事実上崩壊したと指摘されており、香港の将来に対する懸念が高まっています。

また、香港特別行政区基本法と一国二制度の期限である2047年問題も、香港の社会においてたびたび議論されています。香港の未来は、中英共同声明とその後の展開によって大きく左右されていると言えるでしょう。

まとめ

中英共同声明は、香港の歴史において重要な節目となる文書です。この声明は香港の主権移譲を決定づけた一方で、一国二制度の解釈や履行を巡って多くの議論を巻き起こしました。香港の未来は、この共同声明と、その後の国際情勢によって大きく左右されるでしょう。

歴史を振り返ることで、香港の複雑な状況をより深く理解することができるでしょう。

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