2019年6月ホルムズ海峡タンカー攻撃事件

ホルムズ海峡タンカー攻撃事件とは

2019年6月13日早朝（現地時間）、中東のホルムズ海峡付近で、日本とノルウェーの海運会社が運航するタンカーが相次いで攻撃を受けました。この事件は、国際的な緊張を高め、原油価格にも影響を与えるなど、世界中に波紋を広げました。

事件の概要

攻撃対象と被害状況

攻撃を受けたのは、日本の国華産業が所有する「コクカ・カレイジャス」と、ノルウェーのフロントライン社が所有する「フロント・アルタイル」の2隻です。これらのタンカーは、吸着型水雷（リムペットマイン）または飛来物による攻撃を受け、両船で火災が発生しました。

事件発生の背景

この事件は、2019年5月のオマーン湾でのタンカー攻撃事件からわずか1ヶ月後、そして安倍晋三首相がドナルド・トランプ米大統領の親書を携え、イランの最高指導者アリー・ハーメネイー師と会談したその日に発生しました。イランとアメリカの間の緊張が高まる中で起きたこの事件は、両国関係をさらに悪化させる要因となりました。

事件の背景：高まる緊張

米国のイラン核合意離脱と制裁

2018年5月、米国はイラン核合意から一方的に離脱し、イランに対する制裁を再開しました。これにより、イラン経済は深刻な打撃を受けました。イランはこれに対抗し、世界の石油輸送の要衝であるホルムズ海峡の封鎖を示唆するなど、緊張が高まっていました。

過去の類似事例

イラン・イラク戦争中には、両国間でタンカーを攻撃し合う「タンカー戦争」が繰り広げられました。また、2019年5月には、米国のジョン・ボルトン大統領補佐官（当時）が、イランによる米軍攻撃計画の情報を受け、空母打撃群などを派遣するなど、軍事的緊張も高まっていました。

5月のオマーン湾事件

6月の事件に先立つ5月には、オマーン湾でサウジアラビア、アラブ首長国連邦、ノルウェーの石油タンカー4隻が攻撃を受ける事件が発生しました。国際的な捜査の結果、この事件は「国家側の行為者」による攻撃とされ、米諜報部はイランの関与を示唆しました。

攻撃の内容と救助活動

攻撃の状況

2019年6月13日、フロント・アルタイルとコクカ・カレイジャスは、オマーン湾の国際海域を航行中でした。アメリカ当局によると、イランの船舶が2隻の商船に接近しているのが確認され、その後、両船で爆発が発生しました。コクカ・カレイジャスの乗組員は「飛来物でやられた」と証言しています。

乗組員の救助

両船で火災が発生しましたが、乗組員は全員避難に成功しました。イランとアメリカの軍関係者が救助活動を行い、乗組員は無事保護されました。

事件後と責任の所在

各国の対応

事件後、コクカ・カレイジャスはアラブ首長国連邦の港に曳航され、フロント・アルタイルも同様に曳航されました。両船は貨物を荷降ろしし、損害査定を受ける予定です。

米国の主張とイランの反論

米国は、イランがこの攻撃の責任を負っていると非難しました。マイク・ポンペオ国務長官（当時）は、「諜報、使用された武器、専門家の意見」に基づいてこの評価を行ったと述べました。これに対し、イラン政府は一切の責任を否定し、疑惑を批判しました。

各国の反応

サウジアラビアとイギリスはアメリカを支持しましたが、日本とドイツはイランに責任があることの証拠について更なる調査を求めました。アナリストの中には、ISISなどの第三勢力が関与した可能性や、情報操作の可能性を指摘する声もありました。

事件がもたらした影響

政治的な影響

この事件は、イランとアメリカの対立をさらに深刻化させました。また、サウジアラビアなどの中東諸国も巻き込み、地域全体の緊張を高める要因となりました。

経済的な影響

事件後、原油価格は一時的に上昇しました。また、ホルムズ海峡を通る船舶の保険料も上昇するなど、海運業界にも影響が及びました。

まとめ

ホルムズ海峡タンカー攻撃事件は、中東地域の不安定さを浮き彫りにし、国際社会に大きな衝撃を与えました。事件の真相解明と、関係各国の自制的な行動が求められています。

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